プーチンのウクライナ侵略と無差別殺戮を連日テレビで見ているせいか、悪いことばかりが続く最近のニュースにほとほと嫌気がさしていた。そんな中で先週と今朝、2つのgood newsが目に止まった。一つは堀江謙一氏のヨットによる太平洋単独無寄港横断。もう一つが朝日新聞の「小惑星探査機『はやぶさ2』が持ち帰った砂から20種以上のアミノ酸」と題した独自記事。堀江氏は83歳。この年齢にまず驚いた。三浦雄一郎氏のエベレスト登頂挑戦は何歳だったのか、確か80歳を超えていた気がする。長寿国・日本を象徴する快挙と言っていいだろう。堀江氏は日本を代表する海洋冒険家の一人だ。若かりし頃に太平洋の単独無寄港横断を成し遂げたあと、数々の冒険を実践してきた。土地勘があるとはいえ、83歳で63日間という孤独な旅を乗り切った。「強靭な精神力」というべきか「鍛錬された航海術」というべきか、凡人には計り知れない能力を見せてくれた。

小惑星探査機「はやぶさ2」。初号機の「ややぶさ」は数々のトラブルに見舞われ、やっとの思いで地球に帰還した。この反省を踏まえて登場したのが「はやぶさ2」だ。初号機は小惑星の土を格納したカプセルと一緒に探査機も地球へ再突入した。真っ赤に燃えた炎が尾を引いて帰還した航跡が印象的だった。これに対して2号機は地球に帰還すると同時にカプセルを分離した。持ち帰った5.4mgの土を収納したカプセルだけが豪州の砂漠地帯に帰還した。本体はカプセルを分離したあと地球を素通りし次なるミッションに向かった。いまは2031年到着を目指して次なる目標に向かって航行している。カプセルを分離したあと地球の重力を利用したスイングバイで進路を変えたと、当時報道された。目を見張るような科学技術の進歩に驚いた記憶がある。地球に帰還したカプセルから人類誕生につながるアミノ酸が発見された。朝日新聞デジタルの見出しには自慢げに独自との記号がついている。

記事には「アミノ酸が20種類以上見つかったことが関係者への取材でわかった。アミノ酸はたんぱく質の材料。生命のもととなる物質が宇宙由来である可能性を後押しする結果となりそうだ」とある。人類誕生にまつわるアミノ酸が宇宙由来であることが証明されたわけだ。人間は何種類ものアミノ酸を組み合わせたタンパク質でできている。人類誕生の時期は諸説ある。我々の祖先であるホモサピエンスがアフリカの大地に発祥したのは今から5万年〜10万年前と言われている。その後人類の寿命は日本の男子が80歳を超えてきた。83歳の堀江氏は肉体的、精神的に連綿と続く人類の頂点に立ったわけだ。時事ドットコムによると堀江さんは「嵐に見舞われ、高波に揺られ、スコールに遭いバックしてしまうことさえあった」と日記に綴っている。はやぶさ2も堀江氏も決して平坦な旅ではなかった。そこに意味がある気がする。