欧州議会は6日、天然ガスや原子力発電を気候変動の抑制に寄与する投資対象とする規則案を事実上可決した。採決では規則案を拒否する動議に対する賛否が問われた。この動議が反対多数で否決されたため、規則案が実質的に可決された。規則案は脱炭素を実現するための手段で、クリーンエネルギーとは何かを定義したもの。欧州連合(EU)はここにL N Gと原発を盛り込んだ。規則案を拒否する動議の採決は総投票数639人のうち反対が328人、反対票が過半数を上回り動議は否決された。この結果、L N G、原発をクリーエネルギーとする規則案は実質的に成立する見通しとなった。ロターによると今後この規則案は、加盟27カ国のうち20カ国が反対しない限り成立するという。

E Uに加盟している27カ国は地球温暖化を防止するためのクリーンエネルギー政策は総論として賛成している。だが、各論になると加盟国の意見は必ずしも一致していない。今回の規則案の採決がそのことを如実に物語っている。この規則に対する賛否は、ロイターによると以下の通りだ。原発依存度の高いフランス、石炭の使用量が多いポーランドは賛成。オーストリアとルクセンブルクは法制化されればEUを提訴する構えだという。デンマークは、二酸化炭素(CO2)を排出するガスを「グリーン」と見なせば、EUの気候変動対策への信頼を損ねると警告している。環境保護団体のグリーンピースも法的措置を取ると表明しているようだ。EU欧州委員会のマクギネス委員(金融サービス担当)は規則案について「EUのエネルギー転換に必要なガスと原子力への民間投資が、厳しい基準を満たすようにする現実的な提案だ」と投票結果を歓迎している。

総論賛成だが各論は異論、反論、オブジェクションといったところか。プーチンのウクライナ侵攻で、地球温暖化阻止に向けた人類の戦いはどこかに吹き飛んでしまったのではないかと危惧していたが、E Uはしっかりと議論を進めている。そんな中でロイターは今朝「コラム:減らないロシアの石炭輸出、制裁効果になお時間か」という記事を配信した。西側の経済制裁の対象外となっているロシア産の石炭。欧米や日本が輸入を減らした分、インドやトルコ、新興国を中心に購入が増えロシア全体の輸出量は実質的には増加しているという。国連を見るまでもなく多様な国々が共存している地球。せめて地球環境の保護と戦争反対ぐらいは総論も各論も賛成でまとまって欲しいと思う。それが実現しないところが“万物の霊長”である人類の泣きどころか。