連日の猛暑でなけなしの思考能力に減衰圧力がかかっている。集中力がない、何をやっても持続しない。老体にムチ打つこれが猛暑の自覚症状だ。朦朧とした頭でテレビのニュースを見ていて「えっ?」と驚いた。猛暑下で感染が爆発的に拡大しているコロナ対策について岸田首相がニューヨークへ出発する前、官邸詰の記者団に語っている。朝日新聞によると感染症法の2類に指定されている陽性者の扱いを、「第7波」の収束後に5類に変更するか否か、「検討を進める考えを示した」というのだ。聞く耳を持つ首相の検討宣言である。これまで頑なに拒否していた方針の変更を示唆した発言である。この発言を聞いた途端に朦朧としていた頭が一気に回転を始めた。これに猛暑が追い打ちをかけ、やがて干からびた頭脳が過回転を始める。そして思わず叫んでしまった。「遅い」。

感染症法の2類に指定されているコロナ陽性者は、病院かそれに相当する施設での隔離が義務付けられている。その上医療機関は感染者の全数を保健所に報告することが義務付けられている。結果的に医療機関や保健所の業務が超繁忙化し、医療逼迫の大きな原因となっている。こうした中でかねてから医療機関や自治体の関係者、さらには一部専門家を含め、コロナの位置づけを2類から5類に変更すべきだとの要望が出されていた。5類はインフルエンザ相当の扱いとなり病院、保健所など関係機関の業務が大幅に緩和される。現在巷に蔓延しているのはオミクロン株の変異種。感染力は旧来のコロナ株に比べると数倍も高いが、重消化率は格段に下がっている。すぐ感染するが重症化しにくい。まさにインフルエンザ並みに変異しているのだ。問題は重症化しやすい感染者と無症状の感染者をどうやって見分けるかだ。

日経新聞によると首相は「2類(相当)として規定される項目について丁寧に検討していく」と述べたほか、「専門家の意見も聞きながら検討していくことは続けていきたい」と語った。ネットで揶揄されている通りの「検討使」ぶりだ。朝日新聞によると「今感染が拡大しているタイミングにおいて、位置づけを変更することは考えていない」としているほか、「今後、時期もしっかり見極めながら、変異の可能性なども判断した上で、2類として規定される項目について、丁寧に検討していく」とも述べている。いま目の前で火事がボウボウと燃えている。岸田首相は「鎮火の方法については火事が消えてから検討する」と言っているようなものだ。政治家に求められる要件の一つは瞬発力だ。この首相には瞬発力がまるでない。自治体や保健所から岸田離れは始まるだろう。N Yに向かった検討使がいくら頑張っても医療逼迫は当面続く。