中国河北省の北戴河駅で、ボランティアを名乗り記者を制止した男性ら=4日
中国河北省の北戴河駅で、ボランティアを名乗り記者を制止した男性ら=4日

 【北京時事】中国で5年に1度の共産党大会を秋に控え、最高指導部メンバーらが河北省の避暑地・北戴河に集まり重要議題を話し合っているもようだ。党大会の最大の焦点は、3期目入りが見込まれる習近平総書記(国家主席)をトップとした次期指導部人事。ペロシ米下院議長の台湾訪問をきっかけに軍事的緊張が高まる台湾情勢も含め、北戴河では当面の重要課題に関する意見交換が行われているとみられる。

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 北戴河では例年夏に非公式な重要会議が開かれているとされるが、日程などは全く明らかにされていない。

 4日、記者が北京から列車で北戴河の駅に着くと、ボランティアを名乗る男性2人に「北京から来た人は出られない。3日から新たに始まった政策だ」と止められた。「すぐ北京に戻らないなら警察を呼ぶ」と言われ、やむなく北京駅に戻ると4人の警官が「外まで送る」と付いてくるなど、例年以上に外国人記者を徹底して排除する態勢が取られている。

 こうした厳しい警備に加え、今月に入ってから習氏ら最高指導部を構成する7人の政治局常務委員の動静も報じられていないことから、党高官や引退した長老らが北戴河に集まっているもようだ。習氏は最高指導部メンバーに自らの側近を起用する意向とされ、北戴河で党大会に向けた詰めの調整が行われる可能性がある。

 「習派」の筆頭格とされる李強・上海市党委員会書記らの最高指導部入りが取り沙汰されるが、李氏は上海での新型コロナウイルスの感染拡大を抑えられず、長期のロックダウン(都市封鎖)で経済の減速を招いた。これに対し、習氏と距離があるとされてきた胡春華副首相はかねて行政手腕に定評があり、首相昇格を求める声が強まっているという見方がある。

 一方、ペロシ氏の訪台に反発し、中国軍は4~7日の日程で台湾を取り囲む海空域で大規模な軍事演習を実施中。党大会を控え、習氏は国内で「弱腰」と批判されることを避けるため強硬に対応している側面がある。

 習氏は3期目入りに向けて、自らの権威向上に努めてきたが、建国の父・毛沢東や、改革開放政策を進めたトウ小平に比べれば実績は乏しい。昨年7月の党創立100年式典で、台湾統一を「党の歴史的任務」と位置付けており、3期目入りを実現すれば、台湾問題で「進展」を図ろうとすると予想されている。

 だが、統一に向けて武力行使も辞さないとする習氏に台湾世論は反発。今回の軍事演習で平和統一の機運はますますしぼんでいる。中台関係の現状や今後の対応についても、北戴河で協議されることになりそうだ。