ロシア軍の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「トーポリ」=2021年1月、モスクワ(EPA時事)
ロシア軍の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「トーポリ」=2021年1月、モスクワ(EPA時事)

 【ニューヨーク時事】1日に開幕した核拡散防止条約(NPT)再検討会議は5日、1週目の日程を終えた。ロシアのウクライナ侵攻で高まる「核の脅威」への危機感から、核軍縮と不拡散を定めるNPTの重要性を指摘する声が各国から相次いだ一方、ロシアはこの場でも核使用の可能性をちらつかせ、非保有国からは核保有国に対する不満が続出。核をめぐる分断が浮き彫りとなった。

 ◇NPT重視は一致

 「条約に基づく義務の履行にしっかりと取り組んでいる」。核保有国の米ロ英仏中5カ国はそれぞれ、NPTこそが「世界を安全なものにしている」(米国)として、NPT重視の姿勢を鮮明にした。ウクライナ侵攻などをめぐり米ロ間を中心に対立が続くが、NPT体制の維持では意見の一致を見せた。

 ただ、米英仏は会合で改めてロシアのウクライナ侵攻を非難。これに対し、ロシアは国の存続が脅かされれば核兵器の使用もあり得ると従来の認識を繰り返した。軍縮協議の会合でロシアが「核の威嚇」を行った形だ。

 ◇いら立つ非保有国

 NPTは、米ロ英仏中に核兵器の所有を認めている。ただ、その条件として軍縮に向けた誠実な交渉を義務付ける。

 しかし、最近の動きは軍縮に「逆行している」(グテレス国連事務総長)。一般討論演説で「わが国の核保有数は5カ国で一番少ない」と述べた英国は昨年、核弾頭の上限目標を引き上げ、むしろ軍拡に踏み出した。「核戦力は常に安全保障に必要な最小限の水準にとどめている」と語った中国も、核開発をやめる気はない。

 こうした核保有国の姿勢に対し、非保有国からは「核兵器が存在する限り、偶発的または意図的な使用による脅威は持続する」(ガーナ)と抗議の声が次々上がった。保有国の取り組みは十分ではないと強い不満が会場にあふれた。

 ◇核禁条約、最終文書に?

 核保有国と非保有国の溝が深まる中、非保有国の不満を契機として制定された核兵器禁止条約が昨年1月に発効した。核保有5カ国は最初の1週間、会合でこの条約に一切言及していない。

 軍縮推進派のアイルランドは演説で核禁条約について「今回の最終文書に反映されることを望む」とくぎを刺した。最終文書の採択は加盟国の全会一致が原則で、今後の協議の焦点となる。

 前回2015年の会議では、ほぼ合意が得られていた最終文書が中東の非核化構想をめぐり、イスラエルに配慮した米国の反対で土壇場で採択されなかった。2回連続で成果を残せなければ、NPTに対する信頼性が揺らぎかねない。残る3週間、厳しい議論が続く。