トルコのエルドアン大統領には明と暗の2つの顔がある。まずは明。同大統領は18日ウクライナ西部リビウでゼレンスキー大統領、国連のグテレス事務総長と会談した。3者会談後の記者会見で同大統領は「恒久的な平和を確立することについて協議した」と語っている。ウクライナの穀物輸出の再開に向けて国連のグテレス事務総長と連携、穀物輸出の実現に貢献している。ちょっと前のこの光景が頭に残っているせいか、記者会見での同氏の発言はウクライナ戦争終結への期待感へと直結する。同大統領もそこを意識しているのだろう。「国連が仲介した穀物輸出再開で作り出された前向きな雰囲気を利用して」(ロイター)、恒久平和実現位向けて協議したと述べている。現時点ではロシアとウクライナの停戦可能性はゼロに近い。それだけにエルドアン氏の発言は、水面下で何かが動いているのではないかとの期待感を抱かせる。一筋の光明にも見える。

これに対して暗の部分も昨日明らかになった。トルコ中央銀行は昨日、政策金利を14%から13%へと1%引き下げた。政策金利の引き下げ事態は各国の事情によってありうる選択肢だ。現にロシア中央銀行は最近引き下げを実施した。だがトルコの場合政策金利の引き下げがいかに異常か、それは物価が年率で80%近く上昇している中で実施されたということだ。トルコではこれまでに何回か同じことが起こっている。どうしてこういうことが起こるのか、ブルームバーグは次のように解説する。「エルドアン大統領は今年6月、利下げの継続を表明。選挙を控え、1年を経ずして利下げを再開した背景には大統領の意向をくむ当局の姿勢が反映されている」と。カブジュオール中銀総裁は経済の実態ではなく、エルドアン大統領の顔色を窺っているのだ。利下げによってトルコリラが急落した。輸入物価が上昇してインフレを加速する。来年に大統領選挙を控え、国民が大統領の選挙対策の犠牲になっている。

エルドアン大統領は時々強面の表情を見せる。スウェーデンとフィンランドのNATO加盟に際してただ一人反対の意向を示した。E Uの加盟国であり価値観を共有する西側陣営に属しながら、強権主義の代表格であるプーチンと親密な関係を結んでいる。米国とは付かず離れず、時に敵対しながら最終的には米国に寄り添う姿勢を強調する。カメレオンというか、変幻自在に不透明感が漂う国際政治の舞台上を動き回っている。ど素人の印象としては駆け引きに長けた剛腕政治家のように見える。どこの国の指導者にも明と暗が付き纏っているが、エルドアン氏の場合は国外と国内で表情が極端に乖離しているように見える。国際舞台で見せる明るい顔は、生活難で四苦八苦している国民の犠牲の上に成り立っているような気がする。今回の利下げについて英在住のファンドマネージャー、キエラン・カーティス氏は次のように語っている。「全く言葉を失う。こうしたことは明らかに行なうべきでない」(ロイター)。