今朝の朝日新聞に面白い記事が載っていた。「『円安でウハウハ』、外貨の評価益を財源に? 財務省が否定のわけは」がそれ。10月7日に当欄に掲載した「ジャーナル(7日)、円安メリットの還元策を考える」を裏打ちしてくるような内容だ。政府・日銀は急激な円安の是正を目指して9月以降、折に触れて外為市場に介入している。こうした中で国民民主党の玉木代表が10月6日の代表質問で、外為特会の含み益を補正予算の財源にしてしてはどうかと提案した。それを取り上げた。岸田首相も財務省も同代表の提案を真っ向から拒否したが、今朝の朝日新聞はこの問題が依然として水面下で燻っていることを抉り出している。要は外為特会にある含み益をどう使うかという問題だ。玉木氏は円安で含み益が約37兆円という巨大な規模に達していると主張。これを国民に還元してはどうかと提案した。

政府の公式見解は「外為特会」は為替相場の安定のためには使えるが、予算の財源としては使えないというもの。この見解は今でも変わっていない。朝日新聞は賛否両論を併記しながらも、スタンスとしてはやや政府寄りのように見える。そんな中で外為特会の資金を予算の財源として使っている事実を紹介している。「(外為特会で管理する)米国債など金利収入で得た剰余金のうち7割を一般会計に繰り入れるルールがあり、毎年2兆円から3兆円が(一般会計の)歳入として繰り入れられている。この7割ルールは厳格な決まりではなく、過去には全額を繰り入れた例もある」と指摘する。政府は既に予算の財源として使っている。金利収入は予算化できるのに、どうして含み益はできないのか。財務省は多分「国際的な慣行」と主張するだろう。為替相場の安定のためには使えるが、国民に還元することはできない。同省には国民という言葉はないのかもしれない。

考えてみれば含み益というのは外為特会に限ったことではない。例えば年金資金を運用している「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIFF)」という組織がある。同法人のホームページを見るとこれまでの運用で発生した累積収益額が示されている。その額はなんと100兆円を超えているのだ。GPIFFの運用についてはアベノミクスの一環で内外の株式に対する投資規制が大幅に緩和され、運用益が飛躍的に増えたという実績がある。もちろん市況環境によっては大幅な含み損が発生するリスクもある。実績はリターンが大幅に優っている。にもかかわらずこの利益を国民に還元するという議論はどこにもない。逆に今朝の朝日新聞は、高齢者の介護保険の保険料引き上げ問題が一面トップを飾っている。日本の外貨準備は180兆円、含み益だけで37兆円だ。財政赤字は口角泡を飛ばして議論するが、含み益や運用益は無視する。これも不思議の国・日本の特徴だ。