8日に締め切られた米中間選挙の開票が始まった。事前の予想では下院で共和党が過半数を奪還しそう。上院は共和党が過半数を獲得するという見方と民主党が巻き返しているとの説もあり、現時点では混沌としている。結果判明は日本時間の今日夕刻ぐらいか。いずれにしても選挙の結果次第でバイデン大統領の残りの任期に大きな影響が出ることになりそうだ。下院での民主党敗北はほぼ確定的。そういう意味では上院の結果がバイデン政権の今後を大きく左右するだろう。最大の焦点はウクライナに対する軍事支援をどうするか。バイデン大統領はゼレンスキー大統領を全面的に支援している。これに対して共和党が上院でも過半数確保となれば、バイデン政権の対ウクライナ支援はかなり制約されることになるだろう。

トランプ前大統領はウクライナ戦争について早期停戦を模索していると言われる。プーチンとの関係もトランプ氏の方がバイデン大統領よりは遥かに友好的と見られており、中間選挙で上下両院を抑えれば共和党の影響力が強まることは間違いない。軍事支援の停止はないにしても、早期停戦に向けた動きが水面下で勢いを増すだろう。これは窮地に陥っているプーチンにとっては渡りに船か。「領土は1ミリとも譲らない」として徹底抗戦を貫いているゼレンスキー大統領にとっては痛手だろう。その場合ウクライナの戦況を左右するのは、NATOをはじめE U諸国の後押しということになる。ウクライナ危機で団結力を強めたE Uだが、原油価格の急騰に伴うエネルギー危機を背景にロシアに対する経済制裁の緩和を求める声も水面下で燻っている。

ドイツ、フランスというE Uの二大主導国の“本音”は早期停戦の実現と見る。独仏以外にも早期停戦を願っている国や指導者は多いだろう。結局、バイデン民主党政権の敗北は、苦境にあえぐプーチンに救いの手を差し伸べることになりそうな気がする。仮にそうなった時にゼレンスキー大統領やウクライナ国民、あるいはE UやNATOはどう動くのだろうか。安易な停戦はウクライナが侵略者・プーチンと妥協することを意味する。その一方で徹底抗戦による正義の戦いの継続は戦争の長期化をもたらし、ウクライナ、ロシアを問わずかけがいのない市民や兵士の命をいたずらに奪うことになる。人類はどちらを選択すべきか。超大国米国の中間選挙の開票を睨みながら、独断と偏見による答えのない質問が頭の中を駆け巡った。