先週来、ウクライナ戦争で一喜一憂している。原因はウクライナ東部ドネツク州にある重要拠点・バフムト、その近郊の町ソレダルで展開されているウクライナ軍とロシア軍の攻防戦にある。プーチンの盟友・プリゴジン率いる民間の軍事組織ワグネルが先週、この街を完全に掌握したとS N Sに投稿した。これに対してロシア軍が、軍の参戦が勝利に繋がったと発表。これに即座に反論したのがプリゴジンだ。「ソレダルにロシア軍の空挺部隊は1人もいなかった」と、軍の正式な発表にイチャモンをつけたのだ。この動きに並行して行われたのがロシア軍のトップ人事。陸海空に分かれている軍隊をすべて統括する参謀総長の職にあるグラシモフが、ウクライナ侵攻作戦の総司令官に任命されたのだ。前任者のスロビキンはたった3カ月で交代させられた。はたから見るとロシア軍はグラシモフの就任を待っていたかのように、ソレダルでの“戦果”を強調し始めたように見える。
そりゃそうだ。参謀総長が現場の指揮官になったのだ。ロシア軍にとっては後がない。これで失敗すれば、責任を問われるのはグラしモフだけではない。プーチンも任命責任が問われることになる。ウクライナ戦争は全体的に見ればロシア軍の軍事的失敗が相次いで表面化している。国内的にも不安が広がっているはずだ。国内の動揺を抑え込まない限り、来年3月に予定されている大統領選挙の勝利も覚束なくなる。プーチンは完全に焦っている。そんな焦りを象徴するのが参謀総長投入という人事ではなかろうか。グラシモフが就任した途端、ソレダルの完全掌握という“戦果”が発表された。なんとタイミングがいいことだろう。これに水を刺すようにワグネル率いるプリゴジンが猛烈な抗議を行なっている。でもそんなことはどうでもいい。ロイターによるとプーチンは昨日、軍がソレダルを制圧したと発表したことについて「前向きな動き」と述べた。その上で、軍がさらに戦果を上げることに期待感を示したという。
それだけではない。ロシア経済の状況は「安定している」とし、「敵の予測だけでなく、われわれの予測よりもはるかに良い」と強調した。さらに「失業率は歴史的な低水準にあり、インフレ率は予想より低く、低下傾向にある」と語っている。インフレ率が低下傾向を示しているのは事実だ。だが下がり方はごく僅か。物価の水準は依然として前月比で12%近い。発言は嘘で固めた“戦果”であり、プロパガンダのように見える。プーチンは正常なのか、健康状態以上に精神状態が気になる。いずれにしても以上は、ど素人がメディアの報道を見て感じた印象に過ぎない。ゼレンスキー大統領も先週末までは「ウクライ軍は持ちこたえている」と発信していた。状況は刻々と変化する。現時点でどうなっているかよくわからない。仮にソレダルが敵の手に落ちたとしても、「全体の戦況に大きな影響はない」という専門家の一言に希望を託すことにする。
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