岸田総理がきのう国会で施政方針演説を行った。演説の評価はとりあえず脇において、この演説から見えてくる日本の課題を整理してみた。課題はいつの時代も山積している。大きいとか、重い、多いという問題ではない。どうやって解決するかが最大の課題だろう。総理は演説の冒頭「77年」という数字を取り上げた。「近代日本にとって、明治維新と、その77年後の大戦の終戦が大きな時代の転換点となった」と指摘、「奇しくもそれから77年が経った今、我々は再び歴史の分岐点に立っている」と語る。この77年に意味があるかどうか分からない。ラッキーセブンが2つ並んでいる。「分岐点」をうまく乗り越えれば新しい日本が開ける、そんな思いだったのかもしれない。そんな中で日本をはじめ世界の国々が、多くの課題に直面している。まずはウクライナ戦争だ。国際秩序を揺るがす大問題だが、いまだに戦争終結への道筋は見えていない。

そんな中で日本はG7の議長国として5月に広島で首脳会議を開催する。総理は「G7議長国として世界を先導していく決意」を示した。何を、どうやって、いつやるのか、具体策は見えてこない。ロシアや北朝鮮、中国の外交攻勢で国際情勢は不穏な空気に包まれている。中国流にいえば「戦狼外交」だ。これに対する備えが防衛力の増強問題。今後5年で新たに43兆円を投入する。財源の一部を税金で賄うというのが総理の基本戦略。「先送りせず対応する」と強調するが、与野党含めて反対論が多い。果たしてたしてどうなるか。「少子化対策」を今後の最重要課題と位置付ける総理。歴代総理が取り組んできた古くて新しい問題でもある。だからあえて「異次元の対策を推進する」と力説する。声を大にして強調するが中身は6月になるまで分からない。分からないまま国会論戦がスタートする。まさに異次元の新手法でもある。頭にあるのは保険制度のようだが、老人介護を含めて保険制度による国民負担はすでに限界に達している。甘利全幹事長は消費税の引き上げに言及している。税も保険も負担は一緒。何もかも財源問題にぶち当たる。

気候変動や地球環境問題も待ったなし。脱炭素にも税金が絡む。ロシアが原油や天然ガスを「武器」として利用しはじめた。エネルギーの安定供給も避けて通れない課題。そこに浮上するのが原発だ。総理は次世代革新炉への転換や、運転期間の延長に活路を求めようとしている。東電はきのう一般家庭の電気料金を6月から約30%値上げすると経産省に申請した。安定供給を確保しようとすれば料金が跳ね上がる。ただでさえ物価は急激に上昇している。「物価を上回るベースアップが必要」と総理は強調するが。城南信金の調査によれば中小企業の7割は、「ベースアップは考えていない」と回答している。この落差、矛盾、ギャップは誰がどうやって埋めるのだろうか。「価格転嫁の促進といった対策も強化する」と総理は強調する。だが、具体策は見えない。憲法改正、新しい資本主義、経済の好循環など総理が公約した課題も依然として未決着だ。課題に課題が積み上がる。これが、きのう開幕したばかりの通常国会を取り巻く風景だ。