表題はブルームバーグのコラムニスト、リーディー・ガロウド氏の手になるコラムのタイトルだ。サブタイトルには「日本の地政学的重要性が高まる中でコミュニケーションギャップが拡大」とある。このコラムを読んで影響力のある政治家や政府、日銀、高級官僚、メディアのエリートたちは何を思うのだろうか。所詮はコラムだ。読む時間などないか。読んでも理解できないだろう。個人的には良くぞ書いてくれたと、がロー氏に賞賛の言葉を贈りたい気分だ。テーマは日銀が推進するY C C(長短金利操作)に絡んだ日銀と市場の対話の欠如。極論すれば日銀は水面下で政府の了解を得ながら、昨年12月に開催された金融政策決定会合でY C Cの許容変動幅を0.25%から0.50%に変更した。市場との対話はなし。それまで黒田総裁は頑なまでに「異次元緩和を維持する」と表明していた。総裁の突然の宗主替えで市場は大混乱。市場関係者の間に強烈な総裁不信が広がった。

「不意打ちをくらったことで、一部の日銀ウオッチャーは、変動幅のさらなる修正があり得るだけでなく、大掛かりな金融緩和策解除も真面目に考えるべきだと自分に言い聞かせ始めた」とガロウド氏はみる。その影響が1月の同会合にも反映される。海外の市場関係者中心に「政策修正の思惑」が渦巻くことに。黒田日銀はもちろんそんな思惑は冷然と無視する。金融政策を取り巻く環境は不透明で極論すれば一寸先は闇といった状態にある。そんな中で世界の主要な中央銀行は悪戦苦闘している。同氏によれば「他の中央銀行は将来の政策の方向性を(市場に)伝えるために苦労しているが、日銀は批判を受けつつも市場があれこれ推測するに任せ、臆測と誤解がその隙間を埋める状況だ。政策のヒントの多くが得られる決定会合後の総裁会見の英文テキストさえ日銀は公開していない」と指摘する。

まだある。「カルロス・ゴーン被告が2018年に逮捕された際、外国人ジャーナリストは東京地検に締め出され、容疑事実どころか勾留を確認することさえできなかった」と付け加えている。外国人ジャーナリストを締め出した結果、それが逆に国際的圧力となって「裁判所は保釈を認めることになった」と言い切る。グローバルな市場との対話を無視する日銀。その姿勢は国際的な潮流に逆行する「日本の特殊性」を浮き彫りにする。結果的に何が起こっているのか。米紙ニューヨーク・タイムズは香港のデジタルニュース部門を東京でなくソウルに移転させた。日本の一人当たりG D Pもすでに韓国に抜かれている。アジアの新興国の多くが日本を追い抜こうとしている。コラムの中には次のような一文もある。「英語の習熟度のランキングも日本は112カ国中80位とバングラデシュやネパールより低い。国外で学ぶ日本人の数も04年のピークから18年までに30%減少した」。日銀だけではない。孤立する日本。大丈夫か。