【図解】中国の経済成長率推移
【図解】中国の経済成長率推移

     【北京時事】中国の国会に当たる第14期全国人民代表大会(全人代)第1回会議が5日、北京の人民大会堂で13日までの日程で開幕した。李克強首相は政府活動報告で、今年の経済成長目標を事前の予想よりも低めの「5%前後」に設定した。厳格な行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策で傷んだ経済の再建は容易ではないと判断したもようだ。国防予算案は1兆5537億元(約30兆5600億円)で、成長目標を上回る前年比7.2%増となった。

    習氏3期目、国家新体制決定へ 経済成長目標5%台か―5日、全人代開幕・中国

     習近平国家主席は昨秋の共産党大会を経て党総書記として3期目入りしており、今回の全人代で国家主席3期目の任期が正式に始まる。政策の実行役となる首相には、習氏側近の党序列2位、李強・政治局常務委員が就く見込みで、習氏の権力基盤がさらに強固になる。

     2022年の実際の成長率は3.0%で、目標の「5.5%前後」に届かなかった。新型コロナウイルスの感染対策として上海市などでロックダウン(都市封鎖)が導入され、経済活動が滞ったためだ。23年の目標については経済専門家の間で「5~6%」と見込まれていたが、予想の下限付近となり、22年目標を0.5ポイント下回った。

     中国は22年末、ゼロコロナ政策を突然解除し、感染大爆発を招いた。李首相は「経済発展は感染拡大など国内外の度重なる予期せぬ事態に見舞われた」と説明。先行きが見通せない中、達成可能な現実的目標にとどめた形だ。ただ、コロナ対策については「決定的大勝利を収めた」と強調した。

     国防予算案の伸びは今年も経済成長目標を大きく上回り、軍事拡張路線が鮮明となった。額は日本の防衛予算案(6兆8219億円)の約4.5倍に当たる。活動報告は「習近平強軍思想」の貫徹や「訓練と戦争準備」の強化方針を訴えた。27年の軍創立100年に合わせた目標達成に向けて、実戦的訓練に力を入れるほか、国防科学技術の能力を向上させるとした。

     台湾問題については「『独立』反対・祖国統一促進を貫き、祖国の平和統一への道を歩む」と明記。「平和統一」は19年を最後に報告から消えていたが、4年ぶりに復活した。今回は、22年の報告にあった「外部勢力の干渉に断固反対する」という表現もなくなった。現状維持のため台湾支援に動く米国との対立が深まることを避けようとしている可能性がある。