[東京 17日 ロイター] – 岸田文雄首相は17日夕に記者会見し、政権の最重要課題として少子化対策・子育て政策への見解を表明した。財源を巡って一部与党が提言する教育国債発行については「安定財源確保や信認の観点から慎重に検討したい」と述べた。
首相は子育て政策の基本理念として、1)若い世代の所得を増やすこと、2)社会全体の構造や意識を変えること、3)全ての子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援すること──の3つを掲げた。
社会の構造や意識を変えていくため、政府目標として男性育休取得率を2025年度に50%、30年度に85%に引き上げるとともに、企業ごとの取り組み状況の開示を進める。育休取得家庭の産後の給付率を手取りの10割にすると明言した。
配偶者に扶養されているパート従業員の就労時間抑制につながる「年収106万円の壁」に関しては、手取りの逆転が生じないよう制度見直しに取り組むと語った。児童手当拡充や若い世帯の住居支援など包括的な支援を講じる、とも述べた。
結婚や出産に応じ奨学金返済制度を見直すとし、児童手当の拡充は兄弟姉妹の数などに配慮する意向も示した。
与党が提言する低所得者支援についても「提言を受けているので考えていきたい」と語った。自民党の萩生田光一政調会長は15日に提言した際、低所得の子育て世代には子どもの人数に応じた支援が必要だと指摘。現金給付について「我々として低所得世帯に一律3万円、さらに低所得の子育て世帯には児童1人当たり5万円を想定している」と述べていた。
<実体経済や金融システムに与える影響、「強い警戒心もって注視」>
一方、米シリコンバレー銀行の破綻などを受けた足元の金融資本市場について「リスク回避の動きがみられる」と指摘しつつ、「流動性供給策など欧米当局が信用不安が拡大しないよう迅速な対応を講じている」と評価した。
日本の金融機関は「総じて充実した流動性と資本を保有しており、金融システムは安定している」とした。その上で、政府として様々なリスクがあり得ることを念頭に置き、「実体経済や金融システムの安定性に与える影響について強い警戒心を持って注視していきたい」と語った。
その一環として、財務省・金融庁・日銀が17日午後に3者会合を行い「政府と日銀の緊密な連携を確認した」と強調した。
(杉山健太郎、竹本能文編集:橋本浩)