[アムステルダム/キーウ/モスクワ/ブリュッセル/ワルシャワ 17日 ロイター] – 国際刑事裁判所(ICC)は17日、ロシアのプーチン大統領に対し、ウクライナでの戦争犯罪の責任を問う逮捕状を発行した。

ICCは、子どもの不法な送還とウクライナ領土からロシア連邦への不法移送の疑いでプーチン大統領の逮捕を要求。「犯罪は少なくとも2022年2月24日からウクライナの占領地で行われたとみられる。プーチン氏が前述の犯罪について個人的に刑事責任を負うとみなす合理的な根拠がある」とした。

ウクライナ戦争を巡る初めての逮捕状となる。

このほか、ロシアの「子どもの権利担当大統領全権代表」のマリヤ・リボワベロワ氏に対しても逮捕状を発行した。

ICCのカリム・カーン主任検察官は声明で、数百人のウクライナの子どもたちが孤児院や児童養護施設から連れ去られ、多くがロシア国内で養子に出されたと指摘。ロシアに連れ去られた時期、子どもたちは戦時における文民の保護を定めたジュネーブ条約第4条の下で保護されていたと述べた。

その上で、ウクライナを巡る他の捜査は進行中だとし、今回の逮捕状は「具体的な第一歩」になるとの考えを示した。

ロシアもウクライナもICCに加盟していないが、ウクライナは自国の領土で起こった犯罪を起訴する権限をICCに許諾している。123カ国が加盟するICCは独自の警察部隊を持っておらず、容疑者を拘束し、裁判に向け移送するのは加盟国に一任している。

プーチン大統領が近く法廷に立つ可能性は低いが、今回の逮捕状は、プーチン大統領がICC加盟国に渡航した場合、逮捕されICCに移送される可能性があることを意味する。

ICCがプーチン大統領に対し逮捕状を出したことについて、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は「法的な観点も含め、ロシアにとって何の意味もない」とし、「ロシアはICC規程の締約国ではなく、何の義務も負っていない」と述べた。

ロシア大統領府(クレムリン)のペスコフ報道官は、ロシアはICCが提起した問題そのものが「言語道断かつ容認できない」とし、ICCのロシアに関するいかなる決定も「無効」と述べた。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ICCがプーチン大統領に対し逮捕状を発行したことは「歴史的な説明責任につながる歴史的な決定」と歓迎した。

さらに、ロシアに連れ去られた子どもの実際の数は1万6000人を「はるかに上回る」とし、プーチン大統領に責任があると非難。「テロ国家の舵取りをする男の決定なしにこのような犯罪的作戦を実行することは不可能だっただろう」と述べた。

ウクライナ政府高官もICCの決定を歓迎した。クレバ外相はツイッターに「正義の歯車は回っている。ウクライナの子どもたちの強制移送を巡り、プーチン氏とマリヤ・リボワベロワ氏に逮捕状を発行したICCの判断を称賛する」と投稿した。

ウクライナのアンドリー・コスチン検事総長は、ウクライナで行われた戦争犯罪の責任はプーチン大統領にあるとするICCの決定は「ウクライナと国際法のシステム全体にとって歴史的」と述べた。イェルマク大統領府長官は、逮捕状の発行は「始まりにすぎない」との認識を示した。

欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表も、ロシアがウクライナで行っている「犯罪と残虐行為」に対する責任を問うことの始まりにすぎないとしながらも、「国際司法とウクライナの人々にとって重要な決定だ」と語った。

ポーランド政府報道官も「ロシアの暴力装置による戦争犯罪を指摘する重要な決定」と指摘。「プーチン大統領はこの装置を率いており、この野蛮な戦争を直接的、間接的に遂行する者たちと共に戦争犯罪人として裁かれなくてはならない」と述べた。

フランス外務省は「ウクライナでロシアが犯した犯罪に責任を持つ者はその地位にかかわらず、正義から逃れることはできない」と述べた。

カナダのジョリー外相も「カナダはウクライナの人々と共に断固として立ち上がる」とし、ICCの決定を歓迎した。

カーンICC主任検察官は約1年前、ウクライナでの戦争犯罪、人道に対する犯罪、ジェノサイド(集団殺害)の疑いなどについて調査を開始。これまで数回にわたりウクライナを訪問し、子どもに対する犯罪や、民間インフラを標的とした攻撃などを中心に調査していると明らかにしていた。