金融不安の引き金となったSVB(シリコンバレー・バンク)の破綻。破綻から約二週間で同行の新しい買い手が決まった。米国の中堅金融機関、日本流に言えば地銀に相当するファースト・シチズンズ・バンクシェアーズ傘下のファースト・シチズン・バンク(FCB)がSVBを買収すると発表した。ロイターによると買収対象は預金、融資債権と一部資産。管財人である米連邦預金保険公社(FDIC)と合意した。ファースト・シチズンズ・バンクシェアーズは金融持株会社。ノースカロライナ州に本社がある。Yahooファイナンスによると同社は、子会社を通じて小売業や商業顧客に銀行サービスを提供するほか、貯蓄預金口座、商業、消費者ローン、信託、資産管理、年金、ディスカウント・ブローカーサービスおよびサードパーティーのミューチュアル・ファンドを含むさまざまな投資商品を提供いている。傘下のFCBが買収し、SVBの名前も残す。

米金融当局の狙い通りの買収劇といっていいだろう。日経新聞によるとFCBは持ち株会社に連なる中堅地銀。1898年創業で、全米21州に500超の支店網を持つ。2022年末の総資産は1091億ドル(約14兆円)で、全米30位。SVBのローン約720億ドルを含む1100億ドルの資産と、預金など936億ドルの負債を引き受ける。買収金額はSVBの買収資産を約165億ドル割り引いた金額となる。FCBにとっては割安な買い物と言っていいだろう。これによって同行の採算は倍増することになる。JPモルガンやバンク・オブ・アメリカといったギガバンクが買収すれば、金融当局が懸念する「大きくて潰せない銀行」が一段と大きくなる可能性があった。その意味で中堅地銀による買収は、これ以上ない買い手だろう。今回の買収によって経営不安説が取り沙汰されていた中堅銀行ファースト・リパブリック・バンクの株価が約12%上昇した。

それだけではない。ロイターによるとJPモルガン・チェースは2.9%高、バンク・オブ・アメリカも5%高となった。S&P500銀行株指数は3.1%、KBW地銀株指数は0.6%、それぞれ上昇した。まだある。欧州市場では先週末に経営不安説から急落したドイツ銀行株が6.2%上昇した。一夜にして金融市場を覆っていた黒い影が、あっという間に雲散霧消したかのような雰囲気だ。本当にそうだろうか。SVBの破綻の原因についてFRBのバー副総裁は、「経営ミスの典型例」であると指摘する。その上で、「特化型のビジネスモデルであったこと、成長が非常に速かったこと、金利リスクを管理しなかったこと、無保険預金に依存していたこと」を破綻の要因として挙げる。だが問題はそこに止まらない。ゼロ金利の超緩和状態の中で、金融当局の監視が行き届かなかったこと。振り返ってみれば誰でもわかることが、渦中で誰も気が付かなかった。そこに最大の問題があるような気がする。