[東京 31日 ロイター] – 小倉将信こども政策担当相は31日、児童手当の所得制限撤廃や支給期間延長などを盛り込んだ、子ども・子育て政策のたたき台を発表した。2024年度からの3年間を集中取り組み期間とし、少子化傾向の反転を目指す。政府は岸田文雄首相のもとに設置する新たな会議体で検討を深めていくが、予算規模や財源が今後の焦点となる。 

2030年代に入れば日本の若年人口は現在の倍速で急減し、少子化は歯止めの効かない状況になるため、これからの6、7年が少子化傾向の反転に向けたラストチャンスとなる。今後3年で優先的に取り組む対策を「こども・子育て支援加速化プラン」としてまとめ、予算措置や法改正などを進める。

結婚や子育ての将来展望が描けるよう、若い世代の所得を増やし、雇用を安定させていくことが「1丁目1番地」となる。児童手当は所得制限を撤廃して支給期間を高校まで延長するとともに、多子世帯を手当てする金額や制度を検討する。

住宅金融支援機構が提供する長期固定金利の住宅ローン(「フラット35」)については、多子世帯に特に配慮しつつ、支援の充実を図る。

相対的に対応が手薄となっている妊娠・出産期から2歳までの支援も強化する。2026年度の診療報酬改定をにらんで出産費用の保険適用の導入などを検討する。

子ども・子育て世帯へのサービスでは、幼児教育・保育の質の向上を目指すほか、就労要件を問わず時間単位で柔軟に利用できる新たな通園給付の創設を検討する。子育ての精神的な負担感や不公平感を緩和するため、男性の育休取得率の引き上げや、育休を支える体制整備を行う中小企業に対する助成措置を大幅に強化することなども盛り込んだ。

小倉担当相は同日開いた会見で、制度のかつてない拡充や、長年の課題解決、時代に合わせた発想の転換など、従来とは次元の異なる少子化対策だと説明。今後、今回発表したパッケージをベースに政策を練りこみ、6月の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)までに将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示する方針だとした。

<予算規模、小倉担当相「現時点で正確に言えない」>

岸田首相はこれまで、政策の中身を詰めないうちに子ども・子育て予算の倍増の基準や時期を話すのは適当ではないとしてきた。ただ、今後は予算規模や財源の議論が本格化していく。

小倉担当相は、今回のたたき台は必要な政策を整理したものであり、この先、具体的な制度設計のもとでそれぞれの予算が確定されていくため、現時点で予算の総額規模について「正確に言えない」と語った。

自民党は29日、少子化対策に関する論点整理を小倉担当相に提出した。内容は59項目に上り、30日付日本経済新聞は、必要な予算総額について自民党幹部が年8兆円程度に及ぶと試算している、と伝えた。

鈴木俊一財務相は31日午前の閣議後会見で、少子化対策の財源について「恒久的な政策には裏付けとなる恒久的な財源が必要」と指摘。「必要な安定財源については国民各層の理解を得ながら、社会全体での負担のあり方を含め幅広く検討を進める必要がある」と語った。

(杉山健太郎)