トランプ前大統領が3日、ニューヨーク入りした。ニューヨーク大陪審によって3月30日起訴されており、4日にマンハッタンの裁判所に出頭し罪状認否を行う。マスメディアは、前大統領が無罪を主張すると報道している。ロイターによるとトランプ氏は私邸のあるフロリダ州から専用機でニューヨーク入りした。3日夜は市内のトランプタワーに滞在し、4日に罪状認否のためマンハッタンの裁判所に出頭する。トランプ大統領は出発前、「魔女狩りだ。かつて偉大だったわれわれの国は落ちぶれる!」とソーシャルメディアに投稿した。罪状認否は東部夏時間4日午後2時15分(日本時間5日午前3時15分)に予定されている。その後保釈が認められれば、フロリダ州の私邸に戻り、同日午後8時15(5日午前9時15分)から演説する計画という。ニューヨーク市当局は、裁判所周辺の警官を増員するなど警戒態勢を強化。アダムス市長(民主党)は、トランプ氏が法を犯した場合には躊躇せず逮捕すると警告している。

何から何まで、ドラマを見ているかのような仕掛けが施されている。現職時代から“お騒がせ”の大統領だったが、大統領選挙で敗北した後も話題に事欠くことがない。トランプ氏のせいでもあり、民主党左派を中心とするトランプ拒否派が種を蒔いていることも騒動を大きくしている。いずれにしてもこの事件は、トランプ氏という稀有な大統領経験者につきまとう固有の問題というよりは、米国の左右の分断を象徴する出来事のような気がする。共和党保守派を中心にトランプ大統領を擁護する有権者やメディアは無罪を信じているし、民主党左派に代表される人々はトランプ氏を地獄の底に突き落とそうと目論んでいる。どちらが正しいかわからない。主流派ともいうべきマスメディアは、圧倒的に左派の主張を擁護している。対する保守派はSNSを使ってトランプ擁護と民主党左派叩きの論陣を張る。傍目で見ると両者の論争が噛み合うことはない。

ニュースの量は反トランプ寄りのものが圧倒的に多い。主流派メディアの大半が民主党ならびに同党左派に親近感を勘いているせいだろう。日本にも同じ傾向がある。というより、日本の主流派メディアは米メディアの亜流にすぎない。トランプ氏が正しいことを言っても真っ当に報道されることはほとんどない。逆にバイデン大統領が間違ったことを言っても、真正面から批判されることはあまりない。マスメディアそのものが米国の左右分断を加速しているといったら言い過ぎだろうか。いずれにしてもこの事件、来年の大統領選挙に大きな影響を与え可能性がある。ロイター/イプソスが3日に公表した世論調査によると、2024年の米大統領選に向けた共和党の候補指名争いで、トランプ前大統領が他候補とのリードを広げたという。打たれ強いトランプ氏のことだ。来年の大統領選挙に向けて今回の起訴を大々的に利用するだろう。左右両派の溝はすでに修復不能になっている。