[東京 3日 ロイター] – 日銀が3日発表した3月短観によると、大企業・製造業の業況判断指数(DI)はプラス1で5四半期連続で悪化し、2020年12月以来の低水準となった。製造コスト高や海外経済の減速が景況感を押し下げた。非製造業DIはプラス20と4四半期連続で改善した

大企業・製造業の業況判断DIは、原材料やエネルギーの価格上昇、海外経済の減速、半導体需要の減退などにより幅広い業種で悪化した。「木材・木製品」「はん用機械」「生産用機械」などからは、設備投資や住宅投資向けの需要減少が影響したとの声も聞かれた。

先行き判断DIはプラス3と、原材料コスト高の一服や販売価格の引き上げなどが寄与し小幅な改善を見込む。「繊維」「石油・石炭」「電気機械」などは、自動車生産の回復が好影響となると予想している。

大企業・非製造業の業況判断DIは2019年12月以来の高水準となった。原燃料高やエネルギーコスト高が重しとなりつつも、新型コロナウイルス感染症の影響緩和や観光支援策が改善につながった。

先行きはプラス15と、引き続き原材料コスト高の圧迫により悪化を見込む。ただ、コロナの影響が後退すると期待から「通信」「対個人サービス」「宿泊・飲食サービス」は改善を見込んでいる。

<設備投資、23年度計画は強めのスタート>

事業計画の前提となる想定為替レート(全規模・全産業)は2023年度通期で1ドル=131.72円と、22年度から1円程度円安となった。

23年度の大企業設備投資計画は、製造業が前年度比プラス5.8%、非製造業が同プラス1.6%となった。日銀の担当者は「22年度は大きめの下方修正となったが、その分が翌年度のところに先送りされている」と説明した。全規模・全産業の23年度計画は同プラス3.9%で。翌年度の計画を聞く3月調査としては過去最高の伸び率となった。

今回の短観の調査期間は2月27日から3月31日。回答基準日は3月13日で、回答基準日までに7割弱が回答した。日銀によると、調査結果には米国の銀行破綻や欧州金融機関の信用不安の影響はほとんど反映されていない。

<非製造業で強まる人手不足感>

大企業・製造業の仕入価格判断DI(「上昇」-「下落」)はプラス60と前回から6ポイント、販売価格判断DI(同)はプラス37と前回から4ポイント低下した。ともに11期ぶりの低下。原材料高の一服が影響した。

大企業・非製造業では仕入価格DIは前回のプラス53からプラス48に低下したが、販売価格DIはプラス28からプラス29に上昇して過去最高を更新した。製造業に比べ、人件費コストの比率が高いことが影響したとみられる。

全規模・全産業の販売価格・物価見通しは1年後、3年後、5年後ともに上方修正され、いずれも過去最高の伸びとなった。1年後の物価は前年比プラス2.8%、販売価格は現状の水準対比プラス3.3%の見通し。

雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は大企業・製造業でマイナス14で、前回と変わらず。大企業・非製造業ではマイナス33で、コロナ拡大前のボトムとなった19年12月調査のマイナス31を下回り、1992年3月調査以来のマイナス幅となった。特に非製造業で人手不足感が強まっている。

(杉山健太郎、和田崇彦 編集:田中志保)