統一地方選挙が終了し政治家や政党、メディアは勝った負けたで喧しい。衆参両院の補選を含め今回の選挙の最大の特徴は、投票率の異常な低さだ。NHKによると統一地方選挙後半の平均投票率は55の町村長選が60.8%、280の市議選が44.26%、250の町村議選が55.49%で「いずれも過去最低」だという。前半戦の41道府県議会議員選挙、6つの政令指定都市の市長選挙、17の政令指定都市の市議会議員選挙も、平均投票率はいずれも過去最低だった。岸田総理は言う。「選挙が民主主義の根幹」。根幹を揺るがす暴力が許されるはずはないが、投票率が減少し続ける選挙を民主主義の根幹と言えるのか。そうではないだろう。投票率の低下は日本沈没を意味する。自民党と維新が勝者とされる今回の選挙、投票率を見る限り日本の政治全体が敗北したと言った方がいいだろう。

そんな中で際立っているのが維新の躍進だ。「身を切る改革」がようやく有権者に理解されるようになったことが大きいが、テレビに出演した藤田幹事長の発言に既成政党にはない目新しさを感じた。地道な選挙活動に加えた「新鮮さ」、これが同党躍進の原動力ではないか。自民党や立憲民主党、共産党といた既成政党には全く感じない「新しさ」。おそらく来るべき総選挙では立憲民主党を抜いて野党第1党になるだろう。その維新以上に新鮮だったのが若干26歳、史上最年少で芦屋市長に当選した高島崚輔氏だ。灘中学・高校、東大、ハーバード大という煌びやかな学歴のせいではない。日本の既成政党に欠けている民主主義の原点をこの人に感じるのだ。昨日メディアの共同インタビューを受けた。芦屋市長選の投票率は55.11%、前回(48.69%)を7%近く上回った。

「政治に無関心だった人が投票したのであれば、非常にうれしい。ただ得票数は有権者の25%。75%の人々に応援してもらえるよう、しっかりやる。市長が代わって社会が良くなったと実感してもらうことが重要だ」(読売新聞オンライン)。「有権者の25%」と全体でみれば少数でしかないことを把握しているのがいい。そして「社会が良くなる」、単純だがこれが政治の原点だろう。過去を引きずり、上から目線の押し付け政治。これに変わって有権者とともに下から積み上げる政治。まさに民主主義の原点だ。同氏の活動が同世代の胸に響けば、若者の政治への関心があっという間に高まるだろう。そう願いたいし、そうなることによって投票率だけでなく政治全体が活性化する気がする。議席にしがみついている老人には、何が起こっているのか理解できないだろう。高島氏を筆頭に若者の間に日本沈没を止める可能性が芽吹き始めたのだ。芦屋市が日本を変えるかもしれない。