日本の人口がこれからどうなっていくのかを推計した「将来推計人口」が発表されました。少子化は前回6年前の推計よりも早いペースで進み、15歳から64歳までの「生産年齢人口」も減り、総人口は2070年には現在の約7割にあたる約8700万人にまで減少。一方で外国人の割合は増加していきます。

「将来推計人口」とは?子どもや高齢者の人口は?詳しく見ていきます。

2070年 日本の総人口が7割に?どうする自治体 模索の動きは?

目次

1.「将来推計人口」ってそもそも何?
2.今回の推計、どんな内容?
3.子ども、生産年齢人口、高齢者の区分ごとの人口は?
4.「出生」「死亡」「国際人口移動」の推計は?
5.推計結果を時系列でまとめると?
6.2071年以降の推計はあるの?
7.「現役世代」何人で高齢者1人を支えることに?

Q1.「将来推計人口」ってそもそも何?

国立社会保障・人口問題研究所が、通常は5年に1度のペースで、直近の国勢調査の結果をもとに、日本国内の将来の総人口(外国人を含む)や年齢構成などがどうなっていくかについて推計したものです。

今回はコロナ禍をはさんだため、前回2017年から6年ぶりの公表となり、3年前、2020年の国勢調査の結果をもとに最新の推計をまとめました。

Q2.今回の推計 どんな内容?

少子化のスピードが前回と比べていちだんと早まり、2070年には日本の総人口は現在のおよそ7割にあたる約8700万人にまで減少、高齢者の割合=高齢化率は39%近くになるとしているほか、外国人が占める割合は10%以上にまで増えるとしています。

では、「総人口」から見ていきます。
2020年は1億2615万人だった人口は2056年に1億人を割り込み、2070年には8699万6000人に減少するとしています。2020年から50年間で約7割にまで減少することになります。

次は「平均寿命」です。
2020年は男性81.58歳、女性87.72歳でした。
2070年には男性85.89歳、女性91.94歳と延び、高齢化率は28.6%(2020年)→38.7%(2070年)にまで上昇するとしています。

また、国の少子化対策の行方とあわせて注目が集まる「出生数」=1年間に生まれる子どもの数ですが、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」を前回6年前の推計よりも低く仮定した結果、少子化のスピードは早くなり、70万人を下回るのは2043年と前回よりも3年早まるとしています。

一方、外国人の占める割合は2070年には10.8%にまで増えると推計していて、この影響で人口減少の進行は前回の推計と比べるとわずかに緩和されるとまとめています。

厚生労働省は今回の推計を踏まえて、年金財政の検証や少子化対策の検討などを進めることにしています。

Q3.子ども、生産年齢人口、高齢者の区分ごとの人口は?

今回の推計では0歳から14歳までの「子どもの人口」、15歳から64歳までの「生産年齢人口」、65歳以上の「高齢者の人口」の3つの年齢区分でも予測しています。

子どもの人口

「子ども」から見ていきます。

0~14歳までの人口は2020年は総人口の11.9%にあたる約1503万人でした。

推計では、その後減少傾向が続き、2053年には1000万人を割り込み、2070年には約797万人と総人口の9.2%まで減少する見込みだとしています。

生産年齢人口

15~64歳までの人口は2020年は総人口の59.5%にあたる約7509万人でした。

推計ではその後は減少傾向は続き、2062年には5000万人を割り込み、2070年には約4535万人と総人口の52.1%まで減少する見込みとしています。

高齢者の人口

65歳以上の人口は2020年は約3603万人で、これは総人口の28.6%にあたり、「高齢化率」は28.6%ということになります。

推計ではその後は増加傾向続き、1971年から1974年に生まれた「第2次ベビーブーム世代」が65歳以上の高齢者になったあとの2043年には約3953万人とピークを迎える見込みだとしています。

その後は減少に転じ、2070年には約3367万人、高齢化率は38.7%と40%近くになる見込みだとしています。

Q4.「出生」「死亡」「国際人口移動」の推計は?

今回の推計を行う上で国立社会保障・人口問題研究所は人口が変動する要因となる「出生」、「死亡」、「国際人口移動」の3つの要素について将来の数値を仮定し、それに基づいて推計しています。

それぞれの推移を見ていきます。

出生

1人の女性が一生のうちに産む子どもの人数の指標となる「合計特殊出生率」は2020年は「1.33」でした。

推計では新型コロナの影響で結婚の件数が減少したことなどを踏まえ、2023年には「1.23」まで低下するほか、2020年代は「1.30」を下回る傾向が続くと仮定しています。

その後は外国人の増加などに伴って上昇し2070年には「1.36」になると仮定しています。

こうした仮定をもとに推計したところ、1年間に生まれる子どもが70万人を割り込むのが2043年で、前回・6年前の推計よりも3年早まると予測しています。さらに、2070年には50万人まで減ると推計しています。

また1年間に生まれる子どものうち、外国人を除いた日本人の子どもの数が70万人を下回るのは2038年と予測していて、こちらは前回の推計よりも5年早まるとしています。

死亡数

次は、高齢化に伴って年々増え続けている死亡者の数です。

外国人を含めた日本で死亡する人の数は2020年は約138万人でした。推計ではその後は上昇傾向が続き2040年には約167万人とピークを迎えるとしています。ただ、そのあとは減少傾向に転じ2070年は約152万人としています。

国際人口移動

日本に入国する人と日本を出国する人の数の差を示す「入国超過数」について、新型コロナの影響があった2020年を除いた直近の水準を反映させたところ、外国人は長期的に入国する人の数が増加し、2040年には16万3700人あまりになると推計しています。

前回・6年前の推計では2035年に6万9000人と予測していて今回は大幅に増加しています。

一方、日本人の出入国の差はほぼないとしています。

Q5.推計結果を時系列でまとめると?

国立社会保障・人口問題研究所は今回の推計結果に基づいて、具体的に将来の人口がどのように推移していくのかを節目となるタイミングごとに年表にしてまとめています。

これを見ると今後の日本の人口減少の進み方が、時系列でイメージできるようになっています。
※「()内は前回推計」。

【2022年(2033年)】
  外国人を含めた日本で生まれる子どもの数が80万人を下回る
【2024年(2023年)】
  100歳以上の人口が10万人を超える
【2027年(2025年)】
  65歳以上の人口の割合=「高齢化率」が30%を超える
【2031年(2030年)】
  日本で死亡する人の数が160万人を超える
【2031年(2030年)】
  総人口の平均年齢が50歳を超える
【2032年(2029年)】
  15歳から64歳までの「生産年齢人口」が7000万人を下回る
【2033年(2040年)】
  0歳から14歳までの「子どもの人口」が1200万人を下回る
【2035年(2032年)】
  18歳の人口が100万人を下回る
【2040年(2039年・168万人)】
  日本で死亡する人の数が約167万人でピークを迎える
【2043年(2042年・3935万人)】
  65歳以上の「高齢者の人口」が約3953万人でピークを迎える
【2043年(2046年)】
  外国人を含めた日本で生まれる子どもの数が70万人を下回る
【2044年(2042年)】
  総人口が1億1000万人を下回る
【2044年(2052年)】
  18歳の人口が80万人を下回る
【2056年(2053年)】
  総人口が1億人を下回る
【2067年(2063年)】
  総人口が9000万人を下回る
【2067年(2063年に50万人)】
  100歳以上の人口が50万人に達し出生数を上回る

Q6.2071年以降の推計はあるの?

国立社会保障・人口問題研究所は2071年~2120年までについても、長期の人口の推移分析の参考として出生率などを一定にした上で予測しています。

それによりますと、外国人を含む日本の人口は2071年は約8609万人でその後は減少が続き、2078年に8000万人を割り込むとしています。
そして2091年には7000万人を割り込み、2120年には5000万人を下回って約4973万人になるとしています。

年代別では2120年は0歳から14歳までの「子どもの人口」は約445万人、15歳から64歳までの「生産年齢人口」は約2517万人、65歳以上の「高齢者の人口」は約2011万人と推計しています。

Q7.「現役世代」何人で高齢者1人を支えることに?

今回の推計では15~64歳の「生産年齢人口」に対する65歳以上の「高齢者の人口」や0歳から14歳の「子どもの人口」の比率も示しています。これらは、生産年齢にある「現役世代」何人で高齢者1人、または子ども1人を支えるかを示す指数になります。

このうち2020年の時点では、15~64歳の人口を「100」としたとき、65歳以上の人口比は「48.0」でした。

「100÷48」の割り算をすると「2.1」となり、「現役世代2.1人で高齢者1人を支える」状況だということになります。

これが今回の推計では次のように上昇していきます。

(※数字は四捨五入)。
2038年「60.4」「現役世代1.7人で高齢者1人を支える」
2070年「74.2」「現役世代1.3人で高齢者1人を支える」

一方、15~64歳の人口を「100」としたときの0~14歳の人口比は、2020の時点では「20.0」でした。「現役世代5人でこども1人を支える」状況です。

この水準が2033年には「17.2」まで低下するものの、その後は「17.3~18.9」の範囲で推移すると推計しています。水準が一定以下に低下しないのは、出生率が低い水準で推移するため、0~14歳の人口が減少するにもかかわらず15~64歳人口も同時に減少していくためです。

また、15~64歳の生産年齢層の人たちがこどもや高齢者を扶養する負担の大きさを示す「従属人口指数」と呼ばれる指標もあります。これは15~64歳の人口に対する、0~14歳の人口と65歳以上の人口の合計との比率で、数値が大きいほど負担が大きいことを表します。

推計では、「従属人口指数」は2020年の「68.0」から2039年に「80.1」に上昇し、2070年には「91.8」に達するとしています。