ウクライナ軍の反転攻勢が近いと報じられてからだいぶ時間が経過している。ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者・プリゴジン氏による5日のバフムトからの撤退表明、直後の撤退表明の撤回と情勢は目まぐるしく動いている。ニュースを見ている限りまるでジェットコースターのようだ。情報が上から下へ、下から上へと揺れ動いている。これを伝えるマスメディアも視点が定まらない。戦争の行方同様に何もかもが“不透明”だ。そんな中で今朝、新しい情報が飛び込んできた。ロイターによると「ウクライナ軍部隊は10日、東部ドネツク州の要衝バフムトの前線地帯からロシア歩兵旅団を撃退した」と発表したのだ。シルスキー陸軍司令官も「ウクライナ軍の反撃の結果、バフムトの一部でロシア軍が最大2キロメートル後退した」と明らかにした。これはウクライナ軍による反転攻勢の始まりなのだろうか。それも定かではない。

クレムリンを狙った何者かによるドローン攻撃。その真相はいまだに明らかになっていない。真犯人を巡って世界中が侃侃諤諤の議論をしている。戦争報道の常と言えばそれまでだが、ニセ情報に明らかな目眩し作戦、ためにする情報もあれば、敵を惑わすための騙し情報など、あの手この手の偽旗作戦がいたるところで展開されている。何が真実で何がフェイクか、素人目にはまるでわからない。わからないのは素人だけではない。軍事専門家もジャーナリストも、コメンテーターと称する人たちも、情報番組のメイン・キャスターも、状況は似たり寄ったりだ。クレムリンを狙ったドローン攻撃の真犯人をめぐる論争も、結局は空想や思い込みによる“自説”の解説にすぎない。それぞれが根拠のない推論・仮説を、マスメディアを通して流しているだけだ。真実に近いと思える信頼にたる情報が少ないことに、いまさらながら気がつく。

ロイターによるとプリゴジン氏は9日、「ロシア軍がバフムトから退いている」と表明した。5日に弾薬不足から戦勝記念日の翌日、10日にバフムトから撤退すると表明した。そのプリゴジン氏は、翌6日に弾薬提供が約束されたとして撤退表明を撤回している。それからわずか3日後、9日になると今度はロシア軍が撤退していると語っている。この人の発言が何を目的にしているのか、あるは真実を語っているのか、それすらはっきりしない。そんな中でのウクライナ軍によるロシア軍の撃退表明である。これが総攻撃によるものか、ウクライナ軍にもマスメディアにもこれ以上の詳しい情報はない。素人としては当事者であるウクライナ軍の発言を信じるしかない。ロシア軍の発言には、自分の正当性だけを主張しているような“臭い”を感じる。これに対してウクライナ軍の発言には、自分より国家・国民を優先する雰囲気がある。理由はただそれだけ。