バイデン大統領は16日、債務上限問題を打開するため共和党のマッカーシー下院議長ら議会上下両院の幹部と対面で協議した。ロイターによると協議は1時間足らずで終了。協議後にマッカーシー氏は「週末までに合意を得ることは可能」と発言。さらに同議長は「この日の1時間足らずの協議で今後の対話のための舞台を整えることができた」とも述べている。大統領と議会幹部の協議を総括してロイターは、「デフォルト(債務不履行)回避に向け残された時間が少なくなる中、この日の協議は予想外に明るい雰囲気で終了した」と伝えている。この記事をみるかぎり、関係者の多くが胸をなでおろしていることだろう。債務上限をめぐって繰り返される政府と議会の駆け引き、妥協点はどのへんかまだ見えてこないが、今回もチキンレースの落としどころが関係者間で煮詰まりつつあるようだ。
これより先ロイターは、米国債のデフォルトにそなえて民間の金融機関がさまざまな準備に汗を流している実態を報告している。金融のプロたちもこの問題が民主、共和両党とホワイトハウスをからめたチキンレースであることは百も承知している。それでも周到な準備に取り組まざるを得ないのは、イエレン財務長官による度重なる米国債のデフォルトにたいする警告だろう。政権の主要幹部である財務長官の警告は無視できない。民主・共和両党の主張がどんなにかけ離れていても、最後に妥協が成り立つ。腹の中ではそう“確信”していても、デフォルトに備えた準備をおこたるわけにはいかない。チキンレースとはそういうものだ。バイデン大統領は17日、予定通り19日にはじまる広島サミットに向けて出発する。だが、終了後は予定していた豪州やパプアニューギニア訪問をとりやめて帰国する。債務問題の協議に備えるためだ。チキンレースを少しでも有利にしたいのだろう。
米国の債務上限(現在は31.4兆ドル)はこれまでに何回も引き上げられている。その都度交渉は難航した。だが、これまでに一度として米国債がデフォルトしたことはない。次のような数字もある。世界中の国々の政府債務残高の対GDP比率(出典IMF、2022年現在)だ。ダントツの1位は日本だ。債務比率は261.29%。2位はギリシャ(177.43%)。G7ではイタリアが5位(144.70%)、米国は12位(121.68%)にすぎない。債務上限を突破して米国債がデフォルトするなら、日本はとっくの昔に吹き飛んでいるだろう。議会で債務上限を設定する米国。日本はPB(プライマリー・バランス)の達成目標すら政府が便宜的に決めるだけだ。達成できなければ目標年次を繰り下げればそれで済む。上限をめぐってチキンレースを繰り返す米国のほうが遥かに健全だ。経済も一人勝ちだ。その国の国債がデフォルトすることなどあり得ない。
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