[ワシントン 5日 ロイター] – 米証券取引委員会(SEC)は5日、暗号資産(仮想通貨)交換業最大手のバイナンスと同社のチャンポン・ジャオ最高経営責任者(CEO)らを提訴した。これを受け、ビットコインは約3カ月ぶりの安値に下落した。

SECはバイナンスが取引量を人為的に膨らませ、顧客の資金を流用したほか、米国の顧客が国外の交換所で取引できるようにし、市場規制について投資家に誤解を与えたなどと指摘。ワシントンDCの連邦裁判所に提出された訴状には、バイナンスとジャオ氏、同社の米交換所運営会社に対する13の容疑が記載されている。

SECはバイナンスとジャオ氏が顧客資産を分別管理せず、ジャオ氏が所有する別の会社に移していたと指摘。

バイナンスが「米証券法を回避する巧妙な計画の一環」として米国法人を設立したとも主張した。

また、約3年前から2022年6月まで、ジャオ氏が所有する会社がいわゆるウォッシュトレードを行い、米交換所「バイナンス・ドット・US」上の暗号資産証券の取引量を人為的に膨らませていたとした。

SECのゲンスラー委員長は声明で、ジャオ氏とバイナンス関連会社が「大掛かりな偽り、利益相反、開示の欠如、計画的な法律回避に従事した」と述べた。

バイナンスは声明で、SECと当初から積極的に協力してきたとし、その主張に反対すると表明。合理的な解決策の模索にともに取り組んできたが、SECが土壇場で新たな要求を出して提訴したとし、SECの措置は「他の規制当局から管轄権を主張」するための試みに見えるとした。

また、ブログで「われわれのプラットフォームを断固として守るつもりだ」とした上で「バイナンスは米国の交換所ではないため、SECの措置が及ぶ範囲は限られる」と指摘。「バイナンスとバイナンス・ドット・USを含む系列プラットフォームの顧客資産は全て安全だ」と強調した。

提訴のニュースを受けて、ビットコインは一時6%下落。バイナンスが発行する時価総額4位の暗号資産BNBも5%超下落した。

バイナンスを巡っては、米商品先物取引委員会(CFTC)も今年3月、「違法な」交換所を運営し、コンプライアンス対策に実体がなかったとして同社とジャオ氏ら経営陣を提訴した。

関係筋によると、マネーロンダリング(資金洗浄)と制裁違反の疑いで司法省の調査も受けている。