岸田内閣の支持率が急落した。毎日新聞が21日に発表した世論調査(実施は17日、18日)によると、岸田内閣の支持率は5月の前回調査に比べて12ポイント下落して33%に急落した。5月の広島サミットで挽回した支持率が一気に消失した。無党派層に限った内閣支持率はさらに厳しくたったの11%だった。毎日新聞によると無党派層の支持率はこれまで、閣僚の辞任ドミノに直面した22年12月の12%が最低だったが、今回はこれをさらに下回った。全体の支持率の3分の1以下にまで落ち込んだのも初めてだという。まるでジェットコースターだ。珍しい内閣といった方がいいかもしれない。評価が定まらないのだ。政策に一貫性がなく、振れが大きい。前任の安倍元首相、菅前首相に比べると滑舌が良く、言っていることは一見まともに見える。だがよくよく聞くと政策に一貫性がない、何をやりたいのか分からないのだ。

その代表が防衛費の増強と異次元と豪語する少子化対策だ。防衛費も少子化対策も目指すべき中身をまずアピールする。そこに大きな異論は起こらない。だが、その財源となると途端にシドロモドロになる。徹底した歳出の見直しを強調するが、中身には一切触れようとしない。そして「安定財源確保」の必要性をしきりに強調する。岸田総理だけではない。主要閣僚や自民党幹部からも同様の発言が相次ぐ。岸田内閣を支えるのは、健全財政化至上主義ともいうべき財務省だ。安定財源が何を意味するか誰でもわかる。その一方で世論の厳しい反発を意識してか、「国民に負担は求めない」と宣言する。じゃー、財源はどうするの、有権者であれば誰でもすぐに聞きたくなる。一呼吸置いてマスメディアに「NTTの完全民営化」といった記事が登場する。明らかに世論の動向を探る記事だ。政権の意向を受けた前打ち原稿ともいう。最近はメディア業界内部でも、こうした原稿に対する批判が強くなっている。

輪をかけたのが「翔太郎問題」だ。岸田総理の後継者と目される長男を、政務担当とはい首席秘書官に任命したのだ。首席秘書官といえば大臣級の重要ポストである。長男教育を兼ねた人事だとすれば明らかに公私混同というべきだろう。だが問題は翔太郎氏の不適切行動だけではない。総理の任命そのものに問題があったのだ。最近では裕子夫人が単身で訪米、ホワイトハウスでバイデン大統領夫人と面談している。目的はなにか、メディアは沈黙したまま何も伝えない。SNSではLGBT法案に関係しているのではないかとの憶測が流れている。バイデン夫人はLGBTの強力な支援者だ。当初反対していた総理が、夫人の助言を聞き入れ法案の成立を急いだとすれば、有権者の不信を招きかねない。岸田総理がぶち上げる政策の裏には、多くの“私益”が絡んでいるように見えてしまう。ひょっとすると「核廃絶」もその一環か。無党派層は本能ともいうべき嗅覚で、岸田内閣の実体を嗅ぎとっているのかもしれない。

<出典:毎日新聞Web版>