4−6月期の中国GDPが発表された。前期比の伸び率は0.8%増。ロイター予想は0.5%増だったから一見良さそうな数字にみえる。だが、前年同期比は6.3%増にとどまっている。市場予想の7.3%増を下回った。前年はコロナ禍の真っ只中。上海などで全面的なロックダウンが実施されていた時期だ。これに比べた伸び率が6%台にとどまっていることが大きな問題だろう。ロイターによると国際エコノミストの周浩氏は「6.3%という伸び率は下向きのサプライズ」と驚きをあらわにしている。RBCキャピタルマーケッツのアルビン・タン氏は「このペースで減速が続けば、5%という今年の成長目標は達成できないかもしれない」と、先行きにたいする不安を口にする。中国は米国を抜いて世界最大の経済大国になる。これまで多くのエコノミストがこうした見通しに確信を抱いていた。その中国経済が大きな曲がり角に直面しているようにみえる。

本来の中国ならここで大胆な景気刺激策に打って出るところだ。だが、中国を覆っている債務危機は想像を絶するほど深刻だ。同じ日にロイターは中国の不動産販売状況をまとめている。それによると6月の不動産販売(床面積ベース)は前年同月比で28.1%減と、5月(19.7%減)を上回る大幅な落ち込みとなった。まだある。この日に中国不動産業界の象徴ともいうべき恒大集団が、遅れていた21年度と22年度決算を発表した。それによると同社の22年12月期の負債総額は「約2兆4300億元(約47兆円)に達し、債務超過に転落した模様だ」(時事ドットコム)という。47兆円というのは不動産業界全体の負債総額ではない。恒大集団1社の負債額である。気が遠くなるような額だ。この負債に国内外の投資家をはじめ地方政府などが絡んでいる。国全体の負債総額がどのくらいになるのか、中国は頑として公表していない。

公表しないことが問題の深刻さを表している。景気対策が必要な時期に政府は債務増大懸念から、積極的な景気刺激策が取れなくなっている。代わりになにをやっているか?中央銀行による金利の引き下げと金融の量的緩和だ。日本の不良債権対策に似ている。公的資金の投入が必要な時にそれができなくなっている。日本は債務拡大懸念というよりは、政治家の政策的な決断の遅れがデフレをまねいた。中国は日本よりはるかに深刻にみえる。金利を下げれば人民元の価値が低下し、結果的にインフレが加速する。物価高騰で国内消費は減退し、需要が減って生産が行き詰まる。6月の若年層の失業率は21.3%(5月は20.8%)に拡大した。失業率はますます高まり、デフレリスクがにじり寄る。まるでバブル崩壊後の日本経済をみるようだ。中国経済急成長の源泉は西側との貿易の拡大にある。西側と対立しロシアに寄り添い、“核心”にこだわり続ける先に、何があるのだろうか・・・。