先週の土曜日、読売新聞オンラインに掲載された記事をみて唖然とした。タイトルは「特捜検事、供述を誘導か…河井元法相の大規模買収事件で市議に不起訴を示唆」。東京地検ともあろうものが「まだこんなことをやっているのか」、記事を読んだ率直な感想だ。日本の検察が起訴した事案の有罪率は、限りなく100%に近いはずだ。この数字をみれば誰でも、日本の検察の捜査能力がいかに高いか、実感できる。だが、現実はそうではなさそうだ。捜査の過程で巧妙に被告を誘導し、裁判官が有罪判決を出しやすくしている。すべてがそうだとは言わないが、露骨に証言誘導している実態が読売新聞によって暴かれた。記事にはその実態を録音したテープを入手したともある。事実に間違いはないだろう。とすれば検察そのものが、正義に反していることになる。それ以上にこのやり方は強権的だ。捜査によって悪事を暴き出しているわけではない。最初に有罪のシナリオがあって、捜査はそれを裏付けるために実施される。強権国家の独裁者がやりそうな手口で、反民主主義的だ。

対象になった事件は2019年参院選の大規模買収事件。事件の主役である河井克行被告の実刑はすでに確定している。この公判の過程で東京地検特捜部検事が、参考人として任意の取り調べをおこなった広島市議(当時)の供述を誘導したというのだ。同記事によると「公判を担当する別の検事が、河井克行・元法相(60)の公判に証人出廷する市議に、自白調書の通り『買収された』と証言するよう繰り返し誘導していた疑いのあることが読売新聞が入手した録音データでわかった」とある。「事実関係を事前に確認する『証人テスト』という手続きで、実際、市議は法廷で調書通りに証言していた」という。この市議は「元法相から現金30万円を受け取ったと検事から指摘され、『何かは受け取ったが、お金との認識も、(参院選の)買収資金との認識もなかった』」と否定。しかし検事から不起訴にすると示唆され、『買収資金を受け取った』との供述調書に署名した」。

公判担当検事が行った一連の行為が法律に違反しているのかどうか、個人的にはよくわからない。とはいえ、裁判担当の検事が証人の発言を権力的に捻じ曲げたことは事実だ。証言の信憑性を争ったわけではない。証言そのものを検察に有利なように誘導したのだ。こうした行為が罷り通れば有罪率は確実に高くなる。検察の捜査能力が高いわけではない。有罪判決の多くがこうした強引な手法に依存しているとすれば、贈収賄事件という微妙な事件の起訴や判決そのものが、きわめて政治的な色彩を帯びることになる。それ以上に、こんなことをやっていては検察の捜査能力が高まることはないだろう。地道な捜査で証拠を積み上げ、証言の信憑性を木っ端微塵に否定する、これが捜査の大道ではないのか。ど素人の単純な感想だ。「巨悪は眠らせない」というのが、誇り高き検察官の矜持だろう。読売の記事は矜持さえない検察官の実態を抉り出した。