格付け会社フィッチが米国債の格付けを1ランク引き下げた。米国の長期外貨建て債の格付けを、これまでの「AAA」から「AA+」に変更した。見通しについては、「ウオッチネガティブ」から「安定的」に変更した。ブルームバーグ(BB)によるとフィッチは格下げの理由として「予想される財政の悪化、高水準で拡大しつつある政府債務負担」を挙げている。インフレの進行にともなって米国経済の先行き懸念が強まっているが、FRBによる相次ぐ利上げにもかかわらず今のところ米経済は総じて堅調で、米国債も安定的に推移している。このため今回の格下げについてイエレン財務長官は「世界中の人々と投資家、米国民が既に知っている通り、財務省証券は引き続き世界的に見て卓越して安全な流動性資産であり、米経済は基本的に健全だ。フィッチの決定はそれを変えるものではない」と反論した。

市場関係者の間にも意外感があったようだ。BBは以下のようなコメントを拾っている。「タイミングは確かにサプライズだ。市場はこのところ非常に落ち着いていたことから、格下げを受けて明日はやや売られるか注視する」。個人的にも少なからず違和感がある。なんで今ごろという気がする。ロイターには市場関係者の反応として以下のような証言が掲載されている。「エコノミストは赤字を見て、赤字拡大に伴い通貨が弱まると考える。教科書ではそうだ。フィッチはその教科書的な理論にわれわれを当てはめようとしている。皮肉なことにドルは多くの場合、赤字を抱えながらも他の通貨に対して上昇してきた」。このコメントに今回の格下げを考えるヒントが隠されている。世界経済はいま教科書通りに動いていないのだ。

フィッチは教科書に沿って格下げした。イエレン財務長官の反論も教科書的な色彩が強い。国債の格下げにつきまとう財政当局と格付け会社のハレーションだ。だが、問題はそこではない。「皮肉なことに・・・」マーケットが教科書通りに動いていないことだ。莫大な赤字を抱えたドルが他通貨に対して高くなっている。ここをどう評価するか、そこが問題だ。翻って日本。植田日銀はYCCの弾力運用に踏み切った。実質的な政策金利の引き上げである。にもかかわらず週初から円相場は軟調な展開が続いている。金利を上げても円安が止まらないのだ。もちろん、それ以上に米金利が上昇しており、相対的には円安になるのは理解できる。植田総裁は今回の変更には為替対策が含まれると発言している。後手を踏んだのか?市場関係者からは「どうしていいかわからない」(ロイター)との声が漏れてくる。教科書から外れているのだ。そんな時代だ。何が正しいのだろう、まさに◎△$♪×¥●&%#?!