NHKのサイトをみて一瞬混乱した。「保険証廃止時期の延長しない方向で調整 岸田首相が4日にも会見」。このタイトルを見た瞬間、「やっぱり廃止時期先送りか」と思った。よく見てハッとした。「延長しない方向で調整」と書いてある。これまでの首相発言から受けた印象は、「廃止時期の延長」と思い込んでいた。完全に誤解するところだった。とはいえ、この記事が正しいかどうかはこの時点でははっきりしない。今日、会見があればはっきりする。いずれにしても保険証とマイナンバーカードの一体化をめぐるトラブル、これが発覚してどのくらい時間が経ったのだろうか。この問題で岸田政権の支持率は下がる一方だし、改めて総理決断の「遅くて、曖昧で、不透明」な印象が脳裏をよぎる。6月の国会会期末だった。「解散しない」と決断した時もすっきりしなかった。自ら煽った解散風を自分で打ち消した。総理の迷いの原因は?

前任の菅総理がデジタル庁を発足させた。周回遅れのデジタル社会構築に向けて、ようやく日本が動き出したとの期待が膨らんだ。とはいえ、デジタル社会の構築に向けて何をどうするか、優先順位の検討はほとんどなされなかったような気がする。そんな中で政治家の掛け声だけが先行する。保険証を廃止し、運転免許証とともにマイナンバーカードと一体化する。確定申告も住民票の移動もマイナンバーで。法律で定められている各種の申告や手続きも可能にする。ボタンを押すだけで特別給付金の受給が可能になり、各種情報も取得できる。事務処理は合理化され安心、安全なデジタル社会がスタートする。まるで夢のようなデジタル社会が、なんの疑いもなく国民の間に浸透した。だが、蓋を開けた途端、人為的な入力ミスが頻発。同性同名、生年月日も同じという、信じられないような現実があることも浮き彫りになった。

メディアや一部政治家が来年秋に予定されている保険証の廃止時期を先送りすべきだと、声を大にして叫び出す。反対論が強まると迷うのが岸田総理の特徴だ。廃止か先送りか、悩みに悩む。何をそんなに悩んでいるの?聞いてみたい気がする。現行のマイナンバーには不可思議なことがいくつもある。デジタル社会では、間違いを起こしやすい手入力を排除する。これが原則だ。そのためにはまず住民票の整備が必要。コンビニで住民票をアウトプットする。なんのために。デジタル社会は紙を使わない。これ自体が反デジタルだ。スマホを壊したり無くしたりした時、通勤・通学、通院、車の運転はどうする。現時点での対策は皆無。要するに計画そのものが不備なのだ。だからデジタル計画を抜本的に見直す。そのために保険証の廃止は先送りする。それが先送りの唯一の論拠だ。それがないのにムードで先送り論にこだわる。まるでアナログだ。だから行き詰まる。