北京の政府機関に掲げられた中国国旗(AFP時事)
北京の政府機関に掲げられた中国国旗(AFP時事)

 【北京時事】中国でスパイ摘発を強化する改正反スパイ法が施行されてから1カ月がたち、当局が宣伝を本格化させている。摘発を担う国家安全省は連日、SNSで同法について解説。国民に通報を奨励する一方、社員の拘束を懸念する外資企業の不安を払拭したい狙いも透ける。

国家安全省、公式アカウント開設 改正反スパイ法を周知―中国

 スパイ行為の対象を拡大し、摘発機関の権限を強める改正法は、7月1日に施行された。国家安全省は31日、SNS「微信(ウィーチャット)」の公式アカウントを開設。1日からの投稿で「反スパイ闘争の情勢は厳しく複雑だ」などとして、通報窓口を紹介し国民に協力を呼び掛けている。

 海外メディアが改正法に懸念を示していることにも言及し、「悪意のある曲解だ」と非難。「中国で合法的に経営や投資を行う会社・社員を狙ったものではない」と説明し、同法では「違法と合法の行為の境界を示している」とも主張した。

 だが、実際には法に明記された「国家安全と利益」が何を指すか、具体的な説明はなく、どのような行為が抵触するのかは不明瞭だ。「その他のスパイ行為」というあいまいな項目も、不安を増幅させる。対中投資拡大を求める中国側は「誤解を解きたい」(王文濤商務相)として、日米などの経済界に向けた説明会を開いたが、不安解消には至っていない。

 中国の著名論客、胡錫進氏は、中国の反スパイ任務の重要性は増しているとした上で、国家安全を理由とした「鎖国」はできないと指摘。対外開放の必要性を強調し、「中国はさまざまなリスクをバランス良く処理しなければならない」と訴えた。