週刊文集の8月31日号を読んだ。見出しは「木原事件 嘘つきは5人いる」だ。見出しを囲むように5人の重要人物の顔写真が配置されている。木原官房副長官に岸田首相、松野官房長官の3人。内閣の重要閣僚だ。反対側には露木康広警察庁長官と警視庁の國府田(こうだ)剛捜査一課長。警察関係のトップと事件を担当した警視庁幹部だ。見出しと写真の下には簡単なコメントが付記されている。警視庁幹部→“三者会談”がお粗末すぎる、木原副長官→辞意示唆も岸田首相「俺が良ければ」、事件性ありの証拠→廊下の血痕に警視庁の噴飯釈明、松野官房長官は他人事→「もう文春はやらないらしい」。週刊文春は先週夏休みで特集の掲載を行なっていない。この間に当の木原氏は日米韓首脳会談に列席している。これに関して一部では文春と手打ちができたのではないかとの説も流れた。だが、今週号を見る限り文春側の“戦意”はまったく衰えていない。岸田政権はどんどん深みにはまっていく気がする。

今週号の要点をサラッと紹介しよう。まずは三者会談のお粗末ぶり。「7月26日の夜のこと。警視庁の重松弘教刑事部長の執務室に集まったのは、刑事部のナンバー2である井ノ口徹参事官と、國府田剛捜査一課長だ。(略)警視庁幹部が膝を突き合わせたのは、組織のトップの“鶴の一声”がきっかけだった。露木長官が『火消しをしろ』と重松部長に命じたそうです。後輩の露木長官に『どうにかしてやれよ』と発破をかけたのは、元警察庁長官で現在は木原氏と共に官房副長官を務める栗生俊一氏だったそうです」(捜査関係者)。ありありと目に浮かぶような光景だ。ちなみに栗生氏は2018年の再捜査の中止を命じた検察庁長官である。木原氏とは親しい関係にあるようで、岸田内閣の官房副長官に推薦したのは木原氏だとの説が有力だ。「夜遅くまで続いた“三者会談”では、國府田一課長が『自殺と考えて矛盾はない』とするロジックを披露。(略)井ノ口参事官は後輩の意見に耳を傾けていたが、やがてこう口にする。

『自殺とする根拠がない。ますがにまずいだろう』。だが、最後は重松部長がその場を取り成した。こうしたお粗末すぎる三者会談の結果、警察は木原事件の重い扉を閉じること決めたのだ」。捜査を担当した現場の刑事が例外なく「事件性あり」との認識を示している事件である。週刊文春によれば鑑識や遺体を解剖した法医学者も自殺と考えるのは無理との判断をくだしている。にもかかわらず捜査一課の係長であるW氏は遺族に対する2回目の説明で「事件性は認められない」と説明している。もちろん上意下達だ。岸田首相はロシアや中国に対し「国際法を無視した強権的なやり方」と折に触れて批判している。その舌の根も乾かないうちに木原官房副長官を日米韓首脳会議に同席させ、木原氏の疑惑隠しをおこなっている。これで日本は本当に法治国家と言えるのだろうか。栗生氏と露木氏という2人の検察庁の新旧トップには、「巨悪は眠らせない」との決意はなく、政権におもねり、へりくだっているようにしかみえない。