岸田改造内閣が発足した。閣僚19人のうち初入閣が11人、留任が6人、再入閣が2人という内訳。目玉の女性閣僚は5人となった。初入閣11人、女性閣僚5人はいずれも過去最多。新鮮味という点では合格点の改造といっていいだろう。留任した6人はいずれも内閣の骨格を担う重要閣僚、山積する問題をまえに内閣の骨格は維持している。内閣の改造前に実施した自民党の役員人事では、選挙対策本部長に小渕優子氏を起用。女性積極活用の目玉でもある。小渕氏には過去の公職選挙法違反の“傷跡”がつきまとう。説明責任を果たしていないという指摘が依然として残っており、この先の不安要因になりそうだ。組閣を終えたあと総理は記者会見に臨んだが、多弁だった割に心に響くものがなかった、そんな印象を受けた。なぜだろう?総理の会見内容を官邸のHPで改めて確認してみた。

総理の会見は2年前の就任時を振り返って、「私の内閣は、新しい時代を国民の皆様と共に創っていく『新時代共創内閣』であると申し上げました」ではじまる。総理が心に秘める日本の将来像を創り出すため、政治主導で各種政策をリードしていくわけではない。何をどうすべきか、「国民の皆様と共に創っていく」のでる。この姿勢はこれまでの実績が物語っている。マイナンバーカードをめぐる混乱は、国民の怒りに寄り添って右に振れ左になびき混乱を増長した。ことばはきついが“信念”と“確信”がない。だからブレる。そこを覆い隠して過去2年間の実績を誇る。過去の実績を誇らしく語るのは政治家の特権でもある。だからそれはそれでいいのだが、「この2年間を通じて、新しい時代の息吹が確実に生まれつつあります。経済でも外交でも、世界における日本の存在感を高めることができました」。ここまで断言されると「本当にそうなの?」、つい疑いたくなる。

「国際情勢の変動にもたじろいではいられません。我が国こそが、成長するインド太平洋の安定軸となり、世界をリードする。世界の多くの国は、そうした役割を日本に求めています。日本の存在感を世界に示し、平和と国際協調へのリーダーシップによって敬意を集めていきます。この内閣は、『変化を力にする内閣』です」。内閣改造の意義がここではじめて説明される。安倍元総理には「戦後レジュームからの脱却」という大局観があった。だから国民の批判を承知のうえで安保関連法案の改正を強行した。岸田総理は言う。「変化を力として、閉塞感を打破し、所得であれ、暮らし・福祉であれ、外交関係であれ、明日は今日より良くなる、誰もがそう思える国づくりを一緒に行っていこうではありませんか」。あくまで「一緒に行う」のだ。物価高騰で苦しむ国民生活は、後出しジャンケンの経済対策に委ねる。「消費税を引き下げます」とは口が裂けても言わない。役所で言えば「課長レベルのレク」だ。だから弁多くして響かないのだろう。