先週、YAHOOニュースに経団連・十倉会長の「消費税増税から逃げてはいけない」発言が掲載された。多くのメディアがこの記事を掲載している。政財官の偉い人たちが、胸の奥で温めている政策の一つである。十倉氏は政治家が言えないことを代弁したのだろう。当然のごとく国民から強烈な反発が起こった。そんな中で目についたのがYAHOOニュース。「『国民を殺す気か』経団連会長『消費税増税から逃げてはいけない』発言に集まる憤激『法人税増税から逃げるな』」。記事はFLASHに掲載されたものをYAHOOニュースが取り上げたものだ。タイトルはデスクの“怒り”を反映して激しい言葉づかいになっている。それはそれとして、この記事を読んで感じたのは、政財官の偉い人の間にいまだに消費増税論が根強く残っているという現実だ。十倉氏は19日の会見で、「税を含めて一体的な改革をしなければ、日本の社会保障制度はもたない」と強調したのだ。

もう少し詳しくみてみよう。「若い世代が将来不安なく、安心して子どもを持つには全世代型の社会保障改革しかない。それには消費税などの増税から逃げてはいけない」。経団連は11日に「2024年度税制改正要望」をまとめている。この中で社会保障制度改革の財源として消費税率引き上げを「有力な選択肢」と明記した。会長の発言はこれを受けたもの。正直言って新鮮味も新しい時代を切り拓こうとする意欲もない。旧来からの発想の繰り返しだ。古い。Yahooニュースはこの発言に対してSNSで怒りの声が巻き起こったと伝えている。《実質賃金も年金も下落し続けているのにさらに消費税増税。経団連は国民を殺す気か》《消費税は子どもがいると出費が増え負担が増すため、少子化を加速する要因となる。そのため、社会保障費が余計増大し、消費増税もさらに必要になる負のスパイラルに陥るだけ》《逆に申し上げたい、法人税増税から逃げてはいけない!そして内部留保を有効に社員に使ってほしい!》

庶民の怒りは真っ当だ。アベノミクスのもとで経団連は法人税引き下げを勝ち取り、庶民は消費税増を飲まされた。この間日本経済は異次元緩和と円安が奏功してデフレ脱却、大企業はこの恩恵をもろに受けている。企業業績は連続で過去最高を更新した。それでも大企業は賃金を出し渋り、結果として内部留保が過去最高の500兆円を突破した。片や庶民は社会保障費費の度重なる負担増に苦しめられ、最近はこれに物価の急騰が追い打ちをかけている。政府の無策も手伝って7月の実質賃金は前月比2.5%減だ。これで16カ月連続のマイナス。こんな時に消費税をあげれば、需要が激減し大企業にとってもマイナスのはず。ところがどっこい、企業には円安加速で為替差益がジャブジャブ転がり込んでくる。「若い世代」のためと称して十倉会長は実は、大企業に利益を誘導しようとしているのだ。この感覚が日本をダメにする。消費増税を言う前に十倉氏は法人増税を受け入れ、来春闘に向けて内部留保を取り崩して大幅賃上げを実行すると宣言すべきだ。