イスラエルとマスの衝突は、両国の死者が2100人を超えるという悲惨な現実を世界に突きつけた。一方で、最悪の事態回避に向け各国首脳による外交努力が水面下で繰り広げられている。そんな中で注目されるのが大国・中国の仲介外交だ。今年の3月、敵対していたサウジアラビアとイランの仲介役を買って出て、外交関係の正常化を実現するという歴史的成果をあげた。同じことが今回も期待できるのでは、紛争激化の中で熱い視線が中国に向けられている。そんな期待感を嘲笑うかのような記事をロイターが昨日配信した。タイトルは「焦点:中国、中東緊迫でも動けず 野心の限界露呈か」。記事の冒頭でオランダのフローニンゲン大学助教授で、中国と中東関係の専門家であるビル・フィゲロア氏は、「中国がこの種の中東問題における巨大な立役者である、というプロパガンダに穴を開けるのは間違いない」と述べている。

プロパガンダの主役はもちろん中国である。ロイターによるとサウジとイランの合意後「中国メディアは、米国が長年支配していた中東外交において、中国の存在感が高まったと自画自賛した」と書いている。ところが、今回突発した中東情勢の緊迫化に対して中国外務省の汪文斌報道官は衝突から3日後に「中国は、パレスチナとイスラエルの紛争がエスカレートし続けていることに強い懸念を抱いており、すべての関係当事者に即時停戦、戦闘中止を強く求めている。中国はすべての当事者と意思疎通を保ち、中東の平和と安定のために絶え間なく努力するつもりだ」と述べている。いつものことだが、通り一遍の平和仲介主義だ。ハマスの攻撃を批判するでもなく、イスラエルの反撃を非難するでもない。公平な第三者を装っている。習近平主席に至ってはきょうにいたるもコメントすら出していない。

中国はハマスを裏で支援しているイランに「今後数十年間で4000億ドル近い投資を計画している」といわれている。にもかかわらずハマス支援は明言していない。それ以上にイスラエル避難も控えている。こんな中国に対してSOAS中国研究所(ロンドン)のディレクター、スティーブ・ツァン氏は「習近平政権下の中国は、中東を含むあらゆる場所で尊敬され、賞賛されることを望んでいるが、結局のところ、本当に難しい地域安全保障問題を解決するのに必要な行動を起こす気はない」と断言する。「中国は手っ取り早い成果だけを欲しがっており、基本的にそこ止まりなのだ」とも。一帯一路にからんで中国は中東における平和プロセスの進展を望んでいる。だが、「中国は国際舞台で発言力や影響力を行使し、物事を良い方向に変えようとはしない」(イスラエルの中国研究者)。自分の手は汚さず、中立のポーズはしっかり表現する。リスクテークなき中国の平和仲介外交、世界中から見透かされている。

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