FRBのパウエル議長はきのう、NYのエコノミック・クラブで講演した。ロイターによると発言要旨は以下の通りだ。「われわれは、経済成長と労働需要のレジリエンス(回復力)を示す最近のデータに注意を払っている。成長が持続的にトレンドを上回っていること、または労働市場の引き締まりが緩和されていないことを示す新たな証拠が出てくれば、インフレを巡る進展がリスクにさらされ、金融政策の一段の引き締めが正当化される可能性がある」と。要するに当面は利上げを見送り様子を見るが、米国経済がさらに加速するようなら、政策金利を再度引き上げることをためらわない。ひと言でいってしまえばそういうことだろう。FRBが矢継ぎ早に政策金利を引き上げても、米経済は力強く成長し続けている。インフレなどものともしない。誰でも疑問に思う。どうしてだろう?

経済学者や金融学者、エコノミストにアナリスト、メディアも含めてその答えを探している。だが明確な答えは見つかっていない。そんな中で、今朝ニュースを見ながらひょっとしたらこれがヒントの一つではと思ったのが、FRBが発表した家計調査の内容だ。ロイターが19日に配信した「米家計、コロナ禍で所得差が拡大=FRB調査」がそれだ。この調査は3年ごとに実施されている調査で、家計の所得や金融資産などを調べている。この調査についてロイターは、「2019年から22年にかけて米国世帯は平均して年間所得が大幅に増え、富の蓄積も進んだ。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が起こり、それを受けて政府が大規模支出を行ったこの期間、家計の脆弱性は低下した」と分析している。例えば「純資産の中央値は全ての人種・民族と所得層で大幅に増えた」、「黒人世帯の純資産中央値は60%も増加、他の全ての人種や民族を上回った」、「政府の大規模な景気刺激策が低所得世帯を力強く支えた」など、パンデミックに関連した政府の支援策が家計の所得や資産を増加させた。

調査期間中に「住宅と株式の両市場が堅調に推移し、家計の回復力強化に寄与した」。これを受けてFRBは「19−22年の間、金融の脆弱性は低下した」と指摘する。要するに、この蓄えがインフレの風圧に耐える個人の消費行動を生み出しているのではないか。もちろん格差拡大など見過ごせない問題は多々ある。だが、家計の所得や資産が増えれば消費が活発化し、経済は堅調に推移する。もちろんインフレに耐える賃金の上昇も重要な要素だ。米国経済の強みは家計の健全性にある。とすれば、日本がやるべきことははっきりする。家計の実質所得が十数カ月にわたってマイナスとなっている現状を何とかするしかない。手っ取り早いのは金利を上げて(円高誘導)、消費減税をすることだ。岸田総理もようやく重い腰をあげて所得減税をいいだした。ただ気になるのは「限定期限付き」とわざわざ条件をつけていることだ。言わずもがなだ。景気が良くなったら増税すればいい。それだけのことだ。

ムームードメイン