けさ目に止まったニュースがこれ。「米軍が日本産ホタテ購入へ長期契約、『中国の経済的威圧に対抗』と米大使」。ロイターのインタビューに応じた米国の駐日大使、ラーム・エマニュエル氏の発言だ。日本の水産業界、とりわけ北海道などホタテ養殖業者にとっては嬉しい提案だろう。同大使は「(これは)トモダチ作戦、第2弾だ」と強調しているという。同盟国である米国の大使が、苦境に陥っている水産業界に温かい手を差し伸べるという点ではありがたい話だ。とはいえ、良好な日米関係の中で強い影響力を持っている同大使の提案を単純に受け入れていいのか、一抹の警戒感が脳裏をかすめる。善意は善意として受け取るべきだと思うのだが、裏の裏には裏がある。なにごとも単純に受け止められないのが国際政治の世界だ。何か裏があるのではないか、余分な心配が脳裏をかすめる。

エマニュエル大使で思い出すのは、ネットで盛んに流布された岸田総理の側近中の側近、木原誠二前官房副長官との親密な関係だ。一説によると岸田内閣が予定になかった「LGBT理解増進法』を急遽成立させた背景に、バイデン政権の強い要請があったと指摘する向きがある。この問題に直接関わったのがエマニュエルー木原ラインといわれている。米国の駐日大使が日本の国政に強い関心や影響力を行使するのは通常のことだろう。ただ、通常の法案成立の流れを損なうような強引な立法手続きがまかり通ると、のちのちさまざまな批判や憶測を呼び起こす。LGBT法案もその一つだ。「この法案の成立の見返りに岸田政権はバイデン政権と裏で何かの取引をした」、一部でまことしやかにそんなウワサが飛び交った。事実かどうかわからない。だが、火のないところに煙は立たない。時として揣摩臆測が真実を抉り出すこともある。ホタテの見返りはなにか?邪推が勝手に頭を駆け巡る。

農林水産物や食品の輸出拡大は、安倍政権が掲げた第一次産業活性化に向けて打ち出した戦略だった。岸田政権もこれを受け継いで海産物などの輸出に注力してきた。政府の輸出目標額は2025年に2兆円、2030年に5兆円というもの。この数字はいまも変わっていないのではないか。これまではこの目標に向かって順調に輸出額が増えてきた。目標推進の優等生がホタテだ。主要産地はオホーツク海に面する日本最北端の村、北海道猿払村。輸出全体の半分をホタテが占めている。最大の輸出先は中国。その中国が原発処理水の海洋放出をめぐって海産物の輸入を全面的に禁止した。質の良い日本のホタテはこれで一気に行き場を失った。そこに温かい手を差し伸べたのがエマニュエル氏。同氏曰く「中国の経済的威圧から脱する最善の方法は、標的となった国家を結束して支援することだ。結束して対抗すれば、中国は最終的には退却を迫られる」。裏がないことを祈る。

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