今朝、テレビの情報番組を見ながら「これは犯罪の教唆ではないか」と感じたことがある。見たのは谷原章介氏がMCを務める「めざまし8」。銀座の高級腕時計店で繰り広げられたロレックスの盗難事件。お店側が撮ったビデオだろう。犯人がロレックスを見せてくれと店員に要望。店員は鍵を開けて陳列棚から高級腕時計を取り出し、客の前に運ぶ。犯人は小さな受け皿に置かれた時計を、マジシャンのような手つきで偽物と入れ替え自分のポケットへ。店員が席を立った2〜3秒の間に、高級腕時計を2個、まんまと盗み取ったのである。被害額は2個で800万円。店員とのやりとりなど、ビデオで映し出された犯人はロレックスに関する知識を持ったプロ。店側は警察に被害届を出したという。ビデオには犯行の全容が写っており、犯人はすぐにつかまるだろう。

この犯行に関して気になったのは、フジテレビが「マジックのような犯行の手口」を全部オンエアーしたことである。この番組をみた犯罪予備軍は大いに参考になったのではないか。高級品を扱う店舗側にも、ほんのちょっとの時間だが、担当者が席を立つ時間がある。この間に偽物と高級腕時計をすり替えれば、犯行は難なく実行できる。おそらくフジテレビは、犯行の生々しさを視聴者に伝えたかったのだろう。視聴者はすべて善良なる市民と思い込んでいる。そこに死角が生じる。虎視眈々と犯罪を準備している予備軍は、テレビ局が得意気にオンエアーする犯行手口の映像をみてピンとくるだろう。「そうか、これは使える」。かくして、視聴者はすべて善良な市民と考えているテレビ局は、知らず知らずのうちに犯罪を教唆することになる。おそらくテレビ局にその自覚はまったくないだろう。

同じ番組でこのあとに「トクリュウ」問題を扱っていた。匿名で流動的な犯罪をおこなうグループのことを警察ではこう呼ぶ。昨今大きな問題となっている闇バイト事件の裏で暗躍しているのが「トクリュウ」である。このグループがいま政治問題にもなっているホストクラブ問題の裏で暗躍していると、警察当局は睨んでいる。これを摘発すべく警察庁の露木長官が現場を視察、その映像も放映された。犯罪防止に向けた意気込みを示したのだろう。犯罪の予防やトクリュウへの牽制という点で、そのこと自体は評価できる。気になったのは木原事件にかんして露木長官がいち早く、「(殺人という)事件性はない」と定例記者会見で否定的な見解を表明したことだ。木原事件は遺族の告発を受けて再々捜査が始まった。トクリュウ潰しで先頭に立つ露木長官に忖度して、警察の再々捜査がウヤムヤにならないことを祈りたい。

「宅配型トランクルーム サブクロ」