この動きをどう理解すればいいのだろうか。裏が透けて見える政治家たちが、表舞台に躍り出て「高校授業料の無償化」を声高に叫んでいる。授業料無償化に反対するつもりはないし、特色ある教育をめざす関係者にとっては、特に私立学校にとっては有意義なことだと思う。だがあまりにも解散・総選挙を意識した政治家たちの下心が見え透いている。前日、国民民主党を離党し新党の立ち上げを発表した前原誠司氏の新党は、党名が「教育無償化を実現する会」である。1月1日以前に新党を立ち上げると、翌年の政党交付金がまるまる支給される。年末恒例の政治家どもによる“税金おねだり”行事だ。そうした実態を隠すかのように前原氏は党名に「教育無償化を実現する会」を採用した。厚顔無恥、お里がしれる。頭隠して尻隠さずの愚挙。言葉は悪いがケツの毛まで見えている。

維新の会、小池東京都知事、前原氏の3者は事前に発表の手筈を調整したのだろう。小池都知事はきのう定例議会終了後に記者会見を行い、高校授業料の実質無償化を実施する方針を表明、910万円の所得制限も撤廃すると宣言した。日本で一番裕福な自治体である。少子高齢化で税収が落ち込んでいる遠隔地の自治体にとっては、羨ましいというよりも腹立たしい発表だろう。維新の本拠地大阪ではすでに高校授業料の無償化が始まっている。隣接する和歌山県もこの制度に参加を表明、高校の授業料償化は大きな流れになって広がっていく可能性がある。それはそれで結構なことだと思う。だがこの政策を以前から推進してきた大阪府は別にして、特定政党のPR効果を狙った思惑が先行し過ぎていないか。おそらく小池都知事は都議会初日というタイミングを狙って発表したのだろう。それを知って前原氏は1日前に「教育無償化を実現する会」を立ち上げた。

こうした動きに関して松野官房長官はきのう、定例記者会見で次のようなコメントをした。「国としては今後も都道府県と連携して高校段階の教育費負担の軽減に取り組みたい」(NHK)、いつも通りの“無難”な発言。それ以前に国はまったく別のことを考えているようだ。NHKによると政府・与党は来年度の税制改正に向けて、「高校生などの扶養控除額 児童手当拡大で引き下げを検討」するという。異次元の少子化対策で実施される児童手当が高校生にも支給される。その見返りで高校生の所得税にかかわる扶養控除額を、現行の32万円から25万円に引き下げるというもの。住民税にかかる控除額も引き下げられる。差し引きは増税額より支給額が全世帯で上回るため、該当する世帯の手取り収入は増える計算だという。何から何まで目の回るような制度改革だ。それに群がる政治家。東京都と大阪府の財源はどうなっているのだろうか。前原氏はこれに絡めて税金を掠め取ろうとしている。いやはや、なんという国だろう。

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