金融庁は26日、企業向け保険料を事前に調整していた問題で損害保険大手4社に対し、保険業法に基づく業務改善命令を出した。損保大手への一斉処分は保険金不払いが問題になった平成19年以来、約16年ぶり。自治体も含め、576社の取引先に事前の価格調整が行われていた。鈴木俊一金融担当相は同日の閣議後会見で、法令順守の意識の低さを問題視し「悪質性は高い」と指摘した。
処分を受けたのは東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険。入札時に取引先の保険料を事前調整する不適切な行為が広く認められた。
金融庁は業務改善命令で、経営責任の明確化のほか、再発防止策として適正な営業・保険引き受け態勢の確立やコンプライアンス・顧客保護を重視する企業風土の醸成などを求めた。
また、これらの具体策や数値目標を盛り込んだ業務改善計画を2月29日までに提出することや、1月31日までの中間報告、3カ月ごとの進捗状況の報告なども求めた。
企業向け保険料の事前調整を巡っては、複数の損保でリスクを引き受ける「共同保険」と呼ばれる契約形態で横行。入札の際に担当者同士が連絡を取り合い、提示額をそろえたり、特定の損保のシェアが1位になるよう金額を調整したりする行為が横行していた。
鈴木氏は「対応を経営陣が十分に検討してこなかった結果、広く反復、継続して行われていた」と強く批判した。
金融庁は2回に渡って4社に報告徴求命令を出し、問題の原因を調査。公正取引委員会も19日に4社へ立ち入り検査を実施し、実態解明を進めている。(万福博之)