米商務省は25日、第4・四半期の実質GDP速報値を発表した。ロイターによると年率換算の伸び率は前期比3.3%増となった。インフレを示す指標は1.9%上昇、食料とエネルギーを除くコア個人消費支出(PCE)指数は2.0%上昇した。数字だけ見ればインフレは目標の2%に収まっているうえ、成長率は依然として堅調な勢いを維持している。ひところ心配された景気の失速は杞憂だったことが明らかになり、5月と見られていたFRBによる政策金利の引き下げは当分見送られそうだ。これを受けイエレン財務長官は「コアインフレ率はまさに米連邦準備理事会(FRB)の目標である2%となり、総合インフレ率はそれを下回った」と記者団に述べた。その上で「これは強く健全な支出と生産性向上を反映したもので、インフレ面の課題は生み出していない可能性が高い」との認識を示した。これは事実上のソフトランディング宣言でもある。

米経済に何が起こっているのだろうか。再度イエレン氏の発言に注目してみる。バイデン大統領の経済政策とトランプ前大統領の経済政策を比較したうえで、「バイデン氏のアプローチは『史上最も公平な回復』をもたらし、中間層により多くの利益をもたらした」と評価、「全体としてバイデン政権は、中産階級に恩恵を与え経済を成長させるために、私が経験した中で最も広範な政策と投資を実施した」と述べている。バイデン政権の財務長官を務めているわけだから、バイデン氏を評価するのは当然だろう。とはいえ、バイデン政権がトランプ前大統領による減税の恩恵を受けていることも事実。トランプ氏は2017年に大規模な減税政策を実施した。これによりGDPの7割近くを占めている個人消費が客気づき、GDPを押し上げたことは間違いない。この減税について「10年間で2兆ドルの赤字を増加させたほか、企業や高額所得者への減税が優先だった」とバイデン氏は批判している。

その減税策の一部が2025年に期限切れを迎える。イエレン氏はこれに関し「第2次バイデン政権が発足すれば年間所得40万ドル未満の個人を対象にトランプ前大統領が発効させた減税は維持されるだろう」と述べている。財政赤字を増加させたと批判しながら、トランプ減税を継続すると公言しているのだ。減税が継続し、インフレが収まれば個人消費は活況を続けるだろう。これにインフレを上回る賃上げが続いているわけで。米経済が堅調に推移するのはある意味当然かもしれない。「インフレが低水準にとどまり、労働市場が好調を維持し、人々が雇用見通しについて肯定的に感じている」、イエレン財務長官によるソフトランディング宣言は、米経済の「好循環実現宣言」と言ってもいいのではないか。恒久減税が経済の好循環を創りだすという格好の実現例でもある。