日米の株式市場に奇妙な“連鎖”が起こっている。そうみえるだけかもしれない。いや、事態はもっと深刻なのかもしれない。そうではなく単なる一時的な現象なのかもしれない。いずれにしても、先行きが見通せないことがマーケットの動揺を加速しているとみるのが正解だろう。先週末に米国の2月雇用統計が発表された。焦点は非農業部門雇用者数が予想を上回るかどうか。ロイター予想は前月比20万人増。発表数字は27.5万人増。これだけみると米経済は引き続き堅調で、利下げどころか再利上げの可能性も視野に入りそうな数字。ところが失業率は3.9%で前月の3.7%を0.2%も上回った。動揺の原因は雇用統計だけではない。米国が誇る「マグニフィセント セブン(Magnificent seven)」の株価がこのところ不振に喘いでいる。といっても、すべてというわけではない。不振の象徴はアップルとテスラだ。

要するにマクロ統計だけではなく、ミクロの企業情報にも陰がちらついているという状況のようだ。原因は中国経済の予想外の不振。中国のスマホ市場は世界最大の規模を誇っている。人口14億人に対してスマホの販売実績は12億台といわれる。市場シェアはアップルが堂々の1位、2位から5位までは国内メーカーが占めている。6位につけているのがかの華為技術(ファーウェイ)だ。ロイターによるとスマホの市場シェアは昨年末時点でアップルが前年同期比2.1%減少した。これに対しファーウェイは同36.2%増と急激にシェアを拡大している。中国経済の不振を受けスマホ市場も低迷しているが、そんな中でアップルのシェアをファーウェイが奪っている。加えてアップルはAI(人工知能)での出遅れが顕著。全自動運転車の開発を断念して人材資源をAIに投入すると先ごろ発表した。アップルといえばこれまで一貫してIT市場のリーディングカンパニーだった。その会社に小さな陰がさしはじめているというわけだ。

Magnificent sevenを構成するのはアップル(Apple)、アマゾン(Amazon)、アルファベット(Google)、メタ(M E T A)、マイクロソフト(M S F T)、エヌビディア(N V D A)、テスラ(TSLA)の7社。米国の株式市場を牽引する銘柄だ。米国の映画「荒野の7人」からとった命名とされるが、それ自体が黒沢明監督の名画「7人の侍」がベースになっている。なんの関連もないのだが、2月の米雇用統計を受けて日本の株式市場は1000円を超えて急落している。本家本元は先週末、NYダウが70ドル弱値下がりしただけ。本家の“不安”に激しく“動揺”する日本の株式市場を眺めながら、なんとなく奇異な印象を受けた。ちなみにブルームバーグによると14日に台湾の鴻海精密工業が決算を発表する。同社はアップルにスマホの部品を提供している最大手。同社の業績はアップルの先行きを占う上で極めて重要だという。鴻海の決算でアップルの先行きが見えてくる。日本の株価急落は何を先取りしているのだろうか。

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