今朝なるほどと思ったのはブルームバーグが早朝に配信した次の記事。タイトルは「FRB、利下げ先延ばしで後手に回る恐れ-テイラー・ルールに従わず」。経済学や金融理論をまともに勉強したことがない身にとって、テーラールールとはなんぞや?という素朴な疑問からこのニュースを読みはじめた次第。リードは「米金融当局の動きに注目している人の多くは、2021年にインフレが急上昇し始めた際に当局は利上げを待ち過ぎたと言うだろう。インフレが鈍化している今は、利下げを見合わせており、当局は再び後手に回りつつあると言うかもしれない」。ここまで読んで思わず納得してしまった。金融政策に限らず政策当局はいつも間違える。日頃から頭の片隅に染み付いている政策当局に対する“不信”の念が、この記事を読んでますます強まった次第。

インフレが顕在化しはじめた当初、F R Bのパウエル議長やイエレン財務長官など米国の錚々たる当局者は、「このインフレは一時的現象」と口をそろえて強調した。実体経済の動きを見誤り、インフレ対応策を発動するタイミングで後手を踏んだ。米国だけではない。インフレが1年以上続いていた日本では昨年の初め、当時の黒田日銀総裁が「国民はインフレを受け入れている」と発言、世間の顰蹙を買って発言を撤回した。この発言の致命的な誤りは、世界中の中央銀行が1年以上前からインフレ退治に向けて政策金利を引き上げている中で、異次元緩和を維持する口実として国民を利用したことだ。過去にも金融引き締めのタイミングを失してバブルの形成を許したほか、バブル崩壊したあとは公的資金の投入を躊躇し経済の低迷を加速させた。失われた10年が20年になり、30年になったのもこの時の判断ミスが原因。アベノミクスと称して不況下で消費税を相次いで引き上げたことなど、政府や日銀は肝心な時にいつも平気で判断ミスを犯す。

テイラー・ルールに話を戻そう。ネットで検索すると以下のような説明がある。「テイラー・ルール(Taylor Rule)とは、1993年にアメリカの経済学者ジョン・ブライアン・テイラーが提唱した金融政策ルールの1つであり、インフレ率やGDPギャップ(実際のGDPと潜在的GDPの差)などの経済変数の変化に対し、政策金利をどの水準に設定すればよいかを示したルール」とある。政策金利を導き出す方程式もあり、金融関係者にとっては常識的なルールのようだ。このルールの中身を完全に理解しているわけではないが、米国の場合ブルームバーグが算出した同ルールによる金利と現実の政策金利を重ね合わせてみると、2つの金利の間にはいつも乖離があることが視覚的に理解できる。この乖離が政策判断のずれだとすれば、金融当局の決断はいつも後手に回っている。現下の情勢はインフレ加速か景気の後退か、判断に迷うところ。テイラー・ルールが正しいとすれば、当局はすでに利下げのタイミングを失していることになる。