米経済の快進撃が止まらない。ブルームバーグ(Bb)によると世界最大のプライベート・エクイティ・ファンドであるアポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏は「11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利が据え置かれる可能性が著しく高まっている」と指摘する。F R Bは9月の公開市場委員会(F O M C)で0.5%という予想外の大幅利下げを実施した。この時パウエルF R B議長は、労働市場の後退を未然に防ぐ狙いから大幅な利下げを決定したと説明した。あれから約1カ月、労働市場は依然として堅調に推移しており、株式市場は連日高値更新を続けている。スロック氏はこの理由について「FRBのハト派的な姿勢に加え、株価と住宅価格の高止まり、クレジットスプレッドの縮小、公開市場と非公開市場の両方で企業が資金を調達する道が広く開かれている」ことなどを挙げている。
こんな状況にもにもかかわらず、F R B内部には引き続き利下げをすべきだとの意見が多い。カンザスシティー連銀のシュミッド総裁は21日、「米金融当局として最終的にどこまで低く利下げすべきか不透明な状況を踏まえ、一段と緩慢なペースでの利下げを支持する」との考えを示している。「不透明な状況」というのは9月のF O M C前後に一時的に高まった景気後退懸念にもかかわらず、経済の実態は引き続き強含みで推移している現状を指している。もっとストレートに言うなら「0.5%の大幅利下げは必要なかったのではないか」ということだろう。景気後退懸念が薄らいでいる現状では11月の利下げは「不要」というのがスロック氏の主張。これに対してシュミッド総裁は「一段と緩慢なペースでの利下げを支持する」と主張しているわけだ。
米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁も21日「労働市場のさらなる悪化を阻止するため、米金融当局が利下げを継続すると予想している」と述べている。
パウエル議長以下ハト派が多いF R Bの姿勢が景気後退を防いでいる最大の要因かもしれない。その後の経済データは雇用が当初の統計が示唆したよりも堅調だったことを示している。これに対してスロック氏は「要するに景気拡大は続くということだ」と主張する。アトランタ連銀の経済成長予測モデル「GDPナウ」は、現時点の成長を3.4%とはじいている。「経済が成長を続けインフレが再燃する『ノーランディング(無着陸)』シナリオは健在だ」とも指摘する。個人的にはどちらが正しいのかわからない。市場参加者は11月6、7日の両日に開かれる次回FOMC会合では、0.25%の利下げが実施されると見込んでいる。世界的に見れば一人勝ちの米国経済だが、それでもこれから先のこととなると意見は分かれる。不透明な状況の中ではっきりしているのは、大統領選挙に関係なく経済が動いていることだ。