経団連は9日、会長・副会長会議を開き、就職・採用活動のルール「採用選考に関する指針」を、現在の大学2年生が対象になる平成33年春入社の就活から廃止することを正式に決めた。これを受け、政府は15日から関係省庁連絡会議で経団連や大学側と、学生が安心して就活ができるよう日程を協議する。また、新卒一括採用の見直しなど雇用のあり方全体に関しても、未来投資会議で議論を深める方針だ。

平成8年に日経連の根本二郎会長(当時)が「就職協定」の廃止を表明し、内定日を除いて縛りのない「倫理憲章」に移行したことはあったが、産業界として就活ルールに関与しないのは初めてとなる。

現在の大学3年生が対象の32年春入社までは、会社説明会などが3月1日、面接や採用試験が6月1日解禁の現行ルールが適用される。経団連が指針策定をしない33年春入社についても、混乱を避けるため、政府が経済団体や業界団体、外資系企業に現行ルールの順守を要請する方針だ。

経団連の中西宏明会長は会長・副会長会議後の会見で、「経団連としては指針を策定しないのが妥当との結論を出した」と説明。「政府も問題提起と受け止め、いろんな議論をしていく方向が出ている」と中長期的な見直しの議論に意欲を示した。

就活ルールをめぐっては中西会長が9月3日の会見で、個人的な考えとして、「時代に合わないし、経団連が日程を采配するのは違和感がある」と廃止の意向を表明した。ただ、就活の早期化や長期化の影響を心配し、大学に加え、産業界でも採用難が深刻な中小企業団体の日本商工会議所などが反対しており、終身雇用制度への影響も含め、今後の見直しの方向性が注目される。