臨時国会がはじまり与野党の論戦が本格化してきた。今国会の最重要法案は、外国人労働者の受け入れに関する出入国管理法改正案である。災害対策などを盛り込んだ補正予算案の審議が予算委員会で始まったが、早速外国人の受け入れをめぐって与野党の論戦が本格化している。けさの日経新聞によると、立民の長妻昭代表代行はこの問題について「多文化共生を軸に国を開くのか、『日本人になってもらう』という同化政策をとるのか」と安倍晋三首相にただした。これに対して首相は「混同していただくと困る。いわゆる移民政策をとることは考えていない」と繰り返した。また、長妻氏は「政府の案は生煮えだ。何人くらい(外国人が)増えるのか」と迫った。山下貴司法相は「できるだけ早く示せるよう努力している」と述べるにとどめたが、これが野党の反発を招き審議がたびたび紛糾したという。

毎度のことながら与野党の議論はすれ違っている。長妻代表の質問の意図はわからないわけではないが、多文化共生とか同化政策とか、あまりにも先走った質問のような気がする。労働力不足が顕在化し、建築現場や飲食店、地方の農業や水産業で人手不足が深刻化している。これに対応する形でなんとか外国人労働者の数を増やせないか。それも移民の受け入れを基本的に拒否しているという大枠の中で実現したいという話である。いきなり多文化共生か同化政策かと予算委員会で質問する長妻氏は、民主党以来の悪弊である頭でっかちの印象を拭えない。立憲民主党がまとめた受け入れ対策は、外国人労働者を一般・単純労働の区別なく受け入れる一方、受け入れ総数に上限を設ける新制度の創設が柱。おそらくこれは移民政策に踏み込んでいるのだろう。長妻氏の質問の背景にはそんな事情があるのかもしれない。

政府は2日に出入国管理法改正案を閣議決定した。改正案は外国人労働者の受け入れを認めている「特定技能」に「1号」と「2号」という新たな在留資格を設け、受け入れ者の増加を図るという内容。抜本改正ではなく当面の人手不足をなんとか凌ごうという程度の内容である。移民政策となれば与野党がもっと腰を据えて議論すべき問題だ。目先的にはそれよりも、在留資格の1つである働きながら技術を学ぶ「技能実習制度」にまつわる問題解決を優先すべきではないか。NHKによると「名古屋市にある労働組合には、愛知県や岐阜県など東海地方を中心に働くベトナム人やフィリピン人などの技能実習生からSNSを通じて相談が相次いで寄せられています。相談は2年半の間で86件に上り、内容は賃金の未払いや暴力のほか、セクハラや強制的な帰国など多岐にわたっています」とのこと。与野党とも目先の問題可決にもっと知恵を出すべきだ。