米国の10−12月期のGDPは速報値の2.6%増から2.2%増へ下方修正された。だからといいうわけではないが、このところ世界の中央銀行は軒並み“ハト派”への転向を行なっている。FRBのパウエル議長が1月のFOMCでまずハト派に転向。といってもこの時点ではまだ“小鳩”だった。ついで3月の初旬にはECBのドラギ総裁が転向を表明。金融機関向け貸し出しの強化に言及した。これは明らかに金融緩和への移行を示唆したもので“中鳩”だ。そして27日にはニュージランド中銀のオア総裁が声明で、「次は利下げになる可能性が高い」と述べた。これは完全に“大鳩”である。パウエル議長はその後、徐々に大鳩へ向かって発言を変えている。かくして世界の中銀が軒並みハト派になった。

そして昨日、FRBのクラリダ副議長がパリで講演。ブルームバーグによると「米政策当局者がこうしたリスクを無視することはほぼあり得ない」と発言。「こうしたリスクが存在し、インフレ圧力は抑制されているため、われわれは辛抱強く、かつデータ次第の姿勢を取ることが可能だ。米政策金利にどういった調整が必要となり得るのか、将来の会合で検証すると話した」と伝えている。副議長が指摘したリスクは「英国の欧州連合(EU)離脱」、「世界経済成長見通しの急減速」、「貿易摩擦」。以前から誰もが感じているリスクだ。とくに目新しいものでもない。にもかかわらず世界中の中央銀行がここにきてタカ派からハト派に先を争うように転向し始めている。まるで世界経済に恐慌の大波が近づいているかのようだ。

世界経済の物差しは金利と原油価格だ。金利は米国がいい例だ。昨年来、景気回復を背景に上昇基調をたどってきた。その金利が年明け早々から低下傾向を強めている。直近では長短金利が逆転。これは景気後退の前兆と見られている。OPEC加盟国に非加盟国を加えたOPECプラスの足並みも揃わない。原油価格の引き上げを目指して産油量の削減を目指しているが意見がまとまらない。ロシアが削減策の延長に反対しているのが主因だが、世界経済の後退に伴って消費量が減っていることも原油価格の足を引っ張っている。金利と原油の市場実勢が頭打ちとなれば、景気後退は避けられない気がする。それ以上に世界中の中銀が転向すれば、市場心理はデフレマインドに傾く。中銀にとってこれは悩ましい問題だろう。