トランプ大統領が私的な友人との会話で日米安保条約の破棄に言及したと、ブルームバーグ通信(BB)が昨日報道した。この発言についてメディアは反応薄だ。朝日新聞(デジタル版)が今朝、「トランプ氏、日米安保破棄に言及か、私的会話で、米報道」と後追いしている程度。その朝日も記事の最後に菅義偉官房長官の会見内容を掲載した。「報道にあるような話は全くない。米大統領府からも米国政府の立場と相いれないという確認を受けている」、「(日米安保条約は)日米同盟関係の中核をなすものであると考えている」との長官発言を掲載している。いつも政権に批判的な同紙には珍しく、政権の意向に沿って事態の沈静化に務めようとしているかのような書きぶりだ。

BBの記事を引用しよう。「トランプ米大統領が最近、日本との安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近に漏らしていたことが分かった。事情に詳しい関係者3人が明らかにした。トランプ大統領は日米安保条約が米国にとって不公平だと考えている」。さらに記事は続く。「関係者によれば、トランプ氏は同条約について、日本が攻撃されれば米国が援助することを約束しているが、米国が攻撃された場合に日本の自衛隊が支援することは義務付けられていないことから、あまりにも一方的だと感じている」と強調する。真面目に考えれば衝撃的な内容だ。なんでもディールの材料にするトランプ氏の日頃の言動からみて、ありえない話ではない。想像するに日米通商交渉の側面支援の要素が強いのだろう。

トランプ発言は東南アジア地域における日米安保の役割、覇権国としての米国の存在感、同国が享受している権益と言った要素は全く考慮していない。“自分中心主義”を貫く同大統領の面目躍如といったところだ。だが、この一言が発せられた途端に日本中が困惑する。アメリカの核の傘がなくなったらどうなる、誰も考えていない。中国や北朝鮮の核に日本はどう対応するのか。日本人の生命と領土は自衛隊だけで守れるのか。世界中で行われている苛烈な情報戦争を戦い抜く能力が、日本にはあるのだろうか。ホルムズ海峡も自分で守れとトランプ大統領は強調する。イランは両手をあげて賛成するだろう。ペルシャ湾から米軍がなくなれば、イランの思う壺だ。トランプ大統領に翻弄される日本。それにしてもトランプ氏は、対立関係にあるメディアの操作が巧妙になりつつある。日本のメディアよ、せめて言ってやろうじゃないか。“It’s a fake news”と。