東京都の小池知事は昨日、夜の8時から記者会見を行い新型コロナウイルスの感染拡大がオーバーシュート(感染爆発)する可能性があると、強い口調で危機感を露わにした。現状は「感染爆発の重大局面だ」と指摘、それを避けるためには「今週末は不要不急の外出を控える」、「平日はできるだけ自宅で仕事を行って特に夜間の外出は控える」ことなどを強く呼びかけた。東京都におけるオーバーシュートの可能性については早くから指摘されてきた。オリンピックの開催延期問題など、小池知事が多忙を極めていることは理解している。だが、記者会見はもう少し早め、対策はもっと強めの方が良かった気がする。

東京都の感染者数は昨日時点で41人となった。3連休明けの23日が16人、24日が17人である。3連休前が1日平均10人以下に止まっていた状況を勘案すれば、週明けから感染者が一気に増加したことがわかる。3連休中に国や自治体はそれなりに注意喚起していた。だが、全国的に「コロナ疲れ」の雰囲気があったこと、折から桜の開花や卒業式などが重なり、行動変容の中心になっている「3原則」が多少緩んだ気がする。国の対策班は「都内の夜間営業中心の飲食店でクラスターが発生している疑いがある」(NHK)と指摘しているようだ。欧米の例を見るまでもなく新型コロナは、ちょっと油断するとすぐにオーバーシュートしたする。ニューヨークの感染爆発は3〜4日で起こっている。

いま世界中で問われているのは「未知の危機」に対するリスクマネジメントである。感染症がそうであるようにこちらも専門家の世界である。民間ではリスクマネジメントを専門とするエンジニアが育ちつつあるが、役人やメディア、学識経験者の間にはまだほとんどこうした専門家はいない。とはいえ、リスクマネジメントの専門家であるべき人は、いつの時代も政治家である。自治体トップ、大臣、首相には常にこの役割が付きまとう。安倍首相は当初から後手後手に回っていると批判されてきた。小池知事はその教訓を活かすべき立場だが、どうしたわけか同じように後手に回っている。メディアや国民の反応に敏感なはずの小池氏が、安倍首相と同じ轍を踏んでいる。