新型コロナウイルスの襲来で世界中が右往左往している時、 静かに焼け太っている人たちがいる。けさの目覚めはロイターが配信した次の記事を見て、胸の中で沸き起こるザラザラとした違和感を感じるところから始まった。ロイターによると新型コロナの感染防止に向けたロックダウン(都市封鎖)が始まった3月18日から11週間で、ジェフ・ベソスやイーロン・マスク、マーク・ザッカーバークといった大富豪の資産が「5650億ドル(19%)強拡大したことが、シンクタンクの政策研究所(IPS)の調査で明らかになった」というのだ。日本円に換算すれば増えた資産の総額は61兆円超という天文学的な規模になる。

あまりに額が大きすぎて実感がわかない。特別定額給付金(一律10万円)の支給を巡って日本中が、上を下への大騒ぎを繰り広げたことがあほらしく思えてくる。定額給付金の支給総額は12兆円強にすぎない。たった12兆円しかないというべきか。大富豪の資産状況の凄まじさに、改めて感心するばかりだ。正直いって腹も立たないし、怒りも感じなくなっている。これは人類がたどり着いたなれの果てかもしれない。トマ・ピケティーの本がいくら売れても、現実は全く変わらない。気が滅入るばかりだ。だがしかし、ここで踏ん張らないと宇宙船地球号の資産格差は拡大するばかりだ。ダメ元でいい。この構造になんとかメスを入れられないものか。独りよがりの解析を試みるしかない。

結論から言えば、強いものをより強く、貧しい者をより貧しくする新市場主義をベースにした経済運営が間違っているのだ。ウイルス対策として実施したロックダウンや緊急事態宣言が間違っていたわけではない。間違いと指摘する声もあるが、未知なうウイルスと戦うためには致し方なかったと思う。都市を封鎖すれば経済基盤はズタズタに破壊される。それを防ぐための巨額な財政出動も不可避だった。誰も間違ってはいない。問題はその先だ。財政出動によって生み出される資金を先取りして、巨額の資金が株式市場や債券市場に流れ込んだことだ。それによって株価が上がり債券が暴騰している。その裏で収入が途絶えた人たちが明日をもしれぬ生活を余儀なくされている。マーケットより先に家計を温めるべきなのに・・・。