それにしても尋常ではない。新型コロナ対策として与野党合意の上で早期成立を期している巨額補正予算の事務委託費をめぐる疑惑は、その額があまりにも大きすぎる。総事業費が2兆242億円の「家賃支援給付金」の委託事務費は942億円だ。「持続化給付金」、「GoToキャンペーン」並みの巨額な規模だ。国民民主党の玉木代表が「予算規模が1000億円前後の文化庁が、丸々1個買えるくらいの大きな額だ」(読売新聞オンライン)と批判するのも頷ける。委託事業そのものが巨大な規模に達しており、委託費が連れて大きくなるのは致し方ない。それでも中身が曖昧、受託機関が発注側と近い関係にあるなど、事務委託費をめぐる疑念は何一つ解明されていない。

こうした中できょう発売の週刊文春は、「経産省最高幹部と幽霊法人電通社員、テキサス密着旅行、写真入手」と題する記事を掲載している。いつものことながら計ったようなタイミングだ。この高官は経産省中小企業庁の前田泰宏長官(56)だ。同省はこの事実を認めている。ただ、「法律に抵触した行為はないと見ている」(朝日新聞)とコメント、あくまでも長官を庇う意向だ。安倍首相は2月に小中高の一斉休校を決断している。この時は経産省出身の側近など、ごく一部の取り巻きの意見を聞いて決断している。アベノマスクも経産省出身の官僚の進言を受け入れたものだ。体型や強引な物言いなどから官邸の“金正恩”とあだなされているこの経産官僚の進言は、「これで国民のマスク不安はパッと消える」だった。

安倍首相が経産省出身の官僚を側近にしている事実はよく知られている。そして側近政治の結末はことごとくと言っていいほど評判が悪い。小中高の休校は一応“英断だった”と個人的には評価する。だが、アベノマスクはどうか。GoToキャンペーンにしろ、持続化給付金にしろ、特別定額給付金(10万円給付)にしろ、いまだに最も必要とする国民の多くに給付金は届いていない。ここまでくると安倍政権で日本は沈没すると言いたくなる。悪いのは安倍首相だけではない。首相を取り巻く側近といわれる人々、官僚であり、政治家であり、学識経験者であり、メディアであり、政権を担いでいる“本流”の人々全員を“総取替え”するしかない。これは長期政権の末路かもしれない。