NYダウがきのう急落した。前日比1861ドル(6.9%)安の2万5128.17ドルで終了。10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でパウエルFRB議長が、雇用回復に時間がかかることを示唆した。加えてきのうは新型コロナの第2次感染拡大懸念が広がったことなどが原因。とはいえ、米国をはじめ世界の株式市場は、新型コロナの脅威を無視して上昇傾向を強めていた。昨日の急落はある意味では当然のことだろう。少し前から市場関係者の間では「フロス(細かなバブル)が泡立ち始めているようだ」(ブルームバーグ)との見方が囁かれていた。来るべきものが来たと言うだけかもしれない。

ロイターによるとパウエル議長は前々日の会見で「景気の回復は長い道のりだ。しばらく時間がかかる」と語っている。その上で「ハーバード・グローバル・ヘルス研究所の研究者は前日、新型コロナ感染症による米国の死者が9月に20万人に達するとの予想を発表した」との事実も紹介している。米国の感染者数はNY州では基調的に減少しているものの、南部のフロリダ州やテキサス州、西部のアリゾナ州などでは逆に増えており、第2次感染拡大の懸念が強まっている。専門家やメディアはこの間、新型コロナの感染拡大を無視するかのように上昇基調を強めていた株式市場に警告を発していた。

そんな中でのきのうの急落である。ロイターによると専門家は株式市場の急落について、「リアリティーチェック(現実確認)が入った」と解説していると伝えている。この言葉も様々に解釈されるが、ここでは株価がバブルか適正価格かの確認作業、とでも解釈すればいいだろう。個人的にはフロスでありバブルになりかけていると思っているが、ムニューシン長官はきのうCNBCのインタビューで、「新型コロナウイルス感染拡大により米国で経済活動が再び停止される事態に陥ってはならない」と強調している。大統領選挙を控えて米国は警察官に対する抗議デモや、新型コロナの第2次感染拡大懸念、それに米中の対立激化など難しい局面が続いている。